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- ID:
- 52100
- 年度
- 2011
- 月日:
- 1110
- 見出し:
- 県林業試験場樹木公園かいわい
- 新聞・サイト名:
- 朝日新聞
- 元URL:
- http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000331111090001
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 育まれ 癒やし誘う木々
葉を黄色く染めたカツラ並木を通り、斜面の階段を上ると、秋への戸口をくぐったかのように、紅葉の風景が広がっていた。白山市の県林業試験場の広大な敷地に整備された樹木公園。落ち葉がまばらに散る芝生広場の奥には高い木々が生い茂り、人々を誘っていた。
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1962年の開場当初、まだわずか2ヘクタールの公園に、職員や作業員らが広葉樹や針葉樹など様々な木を植樹した。訪れた人たちが花も楽しめるようにと、ツツジも植えられた。シイノキやクヌギ、アカマツなど数十本の木々は、加賀から能登までの山々から譲り受けたものだ。
75年から場長を務めた井幡清生さん(84)は開場の年、本庁の林務課(現在の森林管理課)から試験場の経営課に配属された。病害虫について研究する傍ら、公園の木の世話もした。予算不足で大きな木は買えない。小さな苗木を買ってきて、育てた。敷地を広げる時には周囲の地主宅を回り、夜の1
1時まで説得、交渉した。「もっと多くの木を植えて、来た人に楽しんでもらいたかった」
「大きくなったなぁ」。公園の太いアカマツや桜の木々を見ながら、井幡さんがつぶやいた。あの時植えた木がどれか、今でも覚えている。細く、数十センチしかなかった苗木が、今では立派な大木に。職員らが大切に育ててきた子どもたちだ。
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今は約130種類の桜があり、花見の名所としても知られる。桜を植樹したとき、職員らは薬局「コメヤ」の12代目で、近くに住んでいた故・長基健治さんにアドバイスを求めた。「桜博士」として知られた人物だ。
健治さんの息子の妻・栄子さん(78)は植樹が進んでいたころ、園の職員から度々電話がかかってきたことを覚えている。家にも来て話し込んでいった。金沢市内に持っていた敷地に何種類もの桜を植え、「百桜園」と名付けていた健治さんから譲られた桜は、数十年経った今も公園内に息づいている。
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木を大切にしたいと思う人たちが育んできた樹木公園は今、27ヘクタールにまで大きくなった。梅林や桜椿園、日本庭園などで四季の移ろいを見ることができる。森林の持つ癒やしの力を求め、重なり合う木々の葉の下で人々は憩う。(大野晴香)
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■石川県林業試験場樹木公園 試験場は1962年、鶴来町(現・白山市三宮町)に開場し、83年3月に樹木公園が完成。同時に現在の林業展示館=写真左=も開館し、全国植樹祭が開かれた。800種、1万5千本の樹木がある。カモシカやクマといった野生動物が目撃されることもある。開園時間は
午前8時半~午後5時、年中無休。展示館は11月中の休日は休館。12月から翌年3月まで冬季休館。
■NPO法人加賀白山ようござった 地元のボランティアらによる旧鶴来町や白山かいわいの観光案内団体。事務局は白山比め神社の下を通る表参道にたついっぷく処「おはぎ屋」=同下=にある。おはぎ屋は、県道ができ観光客の足が遠のいた表参道ににぎわいを取り戻そうとできた。同団体への問い
合わせは076・273・5699。
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