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- ID:
- 51633
- 年度
- 2011
- 月日:
- 0921
- 見出し:
- 研究者が注目する田原の松林
- 新聞・サイト名:
- 東日新聞
- 元URL:
- http://www.tonichi.net/news.php?mode=view&id=37656&categoryid=1
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 田原市の西ノ浜沿岸にある松林は、松枯れ被害に悩む一方、種から芽吹いた幼木が育っていることで行政や研究者から注目されている。県や市などが松林再生や農地保護などの研究を進めているほか、防災面での調査も行われている。
西ノ浜の松林は、伊良湖海水浴場から小中山町の総延長11キロにまたがる飛砂防備林約160ヘクタール。農地を強風や塩害から守るために戦前、戦後を通じてクロマツが植林された。近年、松くい虫の被害が深刻となる一方で、種から芽が出て若木が育つ「天然下種更新」が進んでいることも分かって
きた。
県は、09年から10年まで、この松林の機能と後背農地への影響などを調べる「海岸林整備基本調査」を実施。アドバイザーに森林総合研究所の坂本知己気象害・防災林研究室室長や東京都市大学の吉崎真司教授などの専門家を招き、風向風速調査や農家から影響の聞き取りなどを行った。これ
らの調査結果から、将来的な目標林型の設定と管理方法についての基本指針を定める。
市は09年度から今年度にかけて「西ノ浜・中山松林植生調査及びモニタリング調査」と称した調査を行っている。下種更新が見られる場所を1000平方メートルずつ6カ所に区切り、落ち葉を取り除く「ごかき」を行う場所、ウズラ糞肥料を与える場所などと土壌の条件を変え、幼木の生育状況を調べるもの
だ。
財団法人・日本緑化センターによる、松林を再生するための幼木の間引き間隔調査、東日本大震災を受けた信州大学による津波の力にマツの根がどれだけ耐えられるかを調べる防災面での調査も行われている。
県事業のアドバイザーで日本緑化センターの調査にも携わる吉崎教授によると、西ノ浜の松林は「下種更新により、高密度のマツの幼木が育つ国内で貴重な場所」だという。「山間部の森林と違い、常に防風・防災機能を果たす必要がある海岸林は更新についての研究が遅れていた。この下種更新の時
期を逃さずに研究を進め、全国の海岸林整備と再生に役立てたい」。
田原市の小川金一農政課長は「これらの研究で得られたデータはそのまま、この地の松林再生や農地保護、防災面に生かすことができ、非常にありがたい。市としてできる限り協力したい」と話す。
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