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- ID:
- 49581
- 年度
- 2011
- 月日:
- 0128
- 見出し:
- 欧州の排出量取引システムにハッカー
- 新聞・サイト名:
- 産経新聞
- 元URL:
- http://sankei.jp.msn.com/world/news/110127/erp11012719080078-n1.htm
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 欧州連合(EU)加盟国で地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を登録する電子システムにハッカーが侵入する事件が相次ぎ、欧州の排出量現物取引市場が完全に停止している。盗み出された排出量は総額3千万ユーロ(約34億円)。EUは26日に市場を再開する予定だったが、安全対策に
手間取り正常化には数週間かかるとの懸念が出ている。
今月18日、チェコの排出量登録所が入居するビルに「爆弾が仕掛けられた」との通報があり、全員が5時間にわたって避難した。ハッカーはこのスキをついて無防備の登録システムに侵入し、700万ユーロ相当の排出量を盗み出した。
企業の排出量を預かっている環境コンサルタント会社ブラックストーン・グローバル・ベンチャーの担当者は「19日朝、コンピューターを通じて登録所の口座を開けると排出量がなくなっていた」と話す。盗まれた排出量は名義が書き換えられ、エストニアの登録所に移されていた。
昨年11月にはルーマニアの登録所からセメント会社大手のホルシム(本社スイス)の排出量2400万ユーロ相当が盗まれ、今年に入ってオーストリアの登録所も被害に遭うなど、計5カ国で同様の事件が起きた。
オーストリアのケースでは、盗まれた排出量の一部を回収できたが、ほとんどは排出量の現物市場で売りさばかれたとみられる。
排出量取引を温暖化対策の切り札にする欧州では、EU加盟国など30カ国で取引所などを通じて排出量が取引される。昨年の取引高は900億ユーロ(約10兆1千億円)に達し、現物取引はその2割を占める。排出量は各国政府に委託された国別の登録所に登録する仕組みになっている。
しかし、国によって登録所の安全基準が異なり、一部の国ではパスワードさえあれば登録所の口座に簡単にアクセスできる。ハッカーはこうした国を狙って登録所の口座から排出量を盗んでいた。
EUの執行機関、欧州委員会は14カ国の安全基準が不十分として19日、現物取引を停止。26日に再開する予定だったが、盗まれた排出量すら完全に把握できないため再開できなかった。
排出量取引をめぐっては2009年以降、付加価値税(VAT)が排出量にかからない国で排出量を購入し、VATがかかる国でVAT分を上乗せして売却、税務当局にVATを納めず姿をくらます事件が続発。さらに登録所の口座のパスワードを教えるようだますフィッシング詐欺の電子メールが市場参加者に送
られるなど、市場管理システムの不備が明らかになっている。
EUのコニー・ヘデゴー欧州委員(気候変動担当)は本紙の電話取材に「中国も排出量取引に強い関心を示すようになっており、排出量取引は温暖化対策の重要な手段だ。市場の発展段階で詐欺や窃盗が起きるのは不思議ではなく、一部の国では対策に時間がかかるだろう」と指摘。今後の対策として
「EUは13年から、国別の登録所でバラバラに管理している排出量を一体的に管理する欧州排出量交換所を発足させる」と述べた。
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