v10.0
林野庁整備課は「被害木の伐採や搬出、跡地への造林には、国や県の補助事業があるので活用してほしい」と呼び掛けている。
- ID:
- 51201
- 年度
- 2011
- 月日:
- 0803
- 見出し:
- ブックウオッチング:海を豊かにするとっておきの3冊
- 新聞・サイト名:
- 毎日新聞
- 元URL:
- http://mainichi.jp/enta/book/bookwatching/news/20110803ddm015040002000c.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
-
●森が消えれば海も死ぬ 第2版(松永勝彦著・講談社ブルーバックス・840円)
●牡蠣(かき)礼讃(畠山重篤著・文春新書・840円)
●鉄は魔法つかい 命と地球をはぐくむ「鉄」物語(畠山重篤著、スギヤマカナヨ絵・小学館・1365円)
==============
◇森と川と海はつながっている
畠山重篤さん(67)は宮城県の気仙沼湾でカキの養殖業を営んでいる。カキを育てるために湾に注ぐ川の上流にある山に木を植え始めて22年、活動は「森は海の恋人」運動として全国に知られ、各地で同様の植樹運動が広がる原動力となった。
なぜ山に木を植えると海のカキがよく育つようになるのか。
カキは海中の植物プランクトンを食べて育つ。ところがその植物プランクトンが増えるためには鉄が不可欠なのだ。その鉄は海にはなく、山から川によって運ばれることがわかった。
北大教授、松永勝彦さん(現在は四日市大学教授)の研究で明らかになったのだ。畠山さんは気仙沼湾の調査を松永さんに依頼。気仙沼湾の栄養物の9割が川からのものだったことがわかる。
93年刊行の「森が消えれば海も死ぬ」は、魚介類と水辺の森林との関係の重要性を論じた話題の書で、畠山さんの「森は海の恋人」運動も紹介している。昨年2月にはその後の研究成果も併せて第2版が出版された。
植樹運動が理論的にも正しいと確信した畠山さんはその後、本業の傍ら、カキ養殖の歴史を調べ、鉄の研究も開始する。
カキの魅力を思い切り語ったのが「牡蠣礼讃」。フランスのカキがウイルス性の病気で危機にあったとき、宮城産のカキが輸出され、立ち直る。そのときフランスを訪ねた畠山さんは三陸との共通点に気づく。川の上流には落葉広葉樹の森も広がっていた。
鉄は奥が深かった。世界の3大漁場といわれる三陸沖には、偏西風で飛ばされた中国の黄砂や中国とロシアの国境を流れる大河アムール川から鉄が注いでいることなども踏まえ、鉄と海洋物の不思議な関係について描いたのが「鉄は魔法つかい」。子ども向けの体裁ながら、中身は相当濃い。
本を書き上げたのは今年2月。出版を待つばかりになっていたとき、津波に襲われた。幸い海面から25メートルの高さにあった自宅は無事だったが、カキの加工場や資料を保存していた事務所は流された。 震災から1カ月後に会ったとき、畠山さんはこう語っていた。
「津波で海の生き物はすべて姿を消したのですが、1カ月たつと小魚が現れ、増え続けています。森と川と海のつながりがしっかりしていて、鉄が供給されれば海はよみがえるのです。やりますよ」 その少し前、「もし東京から来るなら、一つだけいいかな」と頼まれていたことがあった。それは万年筆のインクカ
ートリッジ。デジタル機器が苦手で、原稿は手書きなのだという。20年分のインクも届けたし、執筆にも困らない。新しい本も期待できそうだ。
..