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- ID:
- 50996
- 年度
- 2011
- 月日:
- 0713
- 見出し:
- がれき再利用 復興の力に変える
- 新聞・サイト名:
- 産経新聞
- 元URL:
- http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110712/dst11071220080022-n1.htm
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 満身創痍の工場は、がれきを再利用するため、機械を回し始めた。宮城県石巻市の国内最大手の合板メーカー「セイホク」石巻工場。臨海工業地帯で5メートルの津波をかぶり操業停止を強いられた中、廃木材を砕いてチップにするプラントを先月23日から稼働させた。
「復興対策本部」と書かれた事務所で、相沢秀郎本部長(62)は「木をリサイクルしてきた当社の経験が生きる」と話した。壁の上部に津波の痕が残る。
同社は木材を加工して合板やボードなどを生産する。平成18年からは、家屋を解体して出る廃木材をチップにしボードの原料にするほか、ボイラーで燃やして蒸気を起こし、合板を乾燥させたり、蒸気で発電して工場内の電力をまかなったりするシステムを築いた。2300キロワット時の発電能力があり、余
れば東北電力へ売電していたという。
今回、県の委託により東日本大震災のがれきのうち木材系のがれきを受け入れる。相沢さんは大量発生しているハエをハエたたきで正確に仕留めながら、「工場の護岸も津波で崩れたままだが、とにかく復興のためにやります」と語った。
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大川小の周囲にあるがれきの仮置き場でチップにされ、牧草の堆肥にするため市営牧場へ運ばれた木くず。眼下に北上川がゆったりと流れていた=宮城県石巻市
木質バイオマス発電
木材を使う発電は「木質バイオマス(生物由来の資源)発電」と呼ばれ自然エネルギーの一つに位置づけられる。林野庁によると、木材を専門に使った発電施設は全国に50カ所程度。石油や石炭よりコストが高いことが普及を阻んでいる。
兵庫県によれば、阪神大震災では1980万トンのがれきのうち50%が再利用された。9割はコンクリートの破片で、多くは砕いて臨海部の埋め立てに使われた。今回の震災で、環境省は東北3県で推計2199万トンに上るがれきのうち7割を木材系とみており、再利用は復興への力となる。
林野庁は被災地の水産加工場などが木質バイオマス発電を整備する際に支援する方針で、震災からの復興へ向けた23年度第2次補正予算案へ調査費を計上する。普及には菅直人首相が退陣の条件の一つとした再生可能エネルギー促進法案の成否も影響する。自然エネルギーによる電力を固定
価格で買い取るよう電力会社へ義務づける法案であり、国会提出が閣議決定されたのは震災当日の3月11日朝だった。
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大川小の周囲にあるがれきの仮置き場でチップにされ、牧草の堆肥にするため市営牧場へ運ばれた木くず。眼下に北上川がゆったりと流れていた=宮城県石巻市
土砂で道路を防潮堤に
大手ゼネコン「大成建設」技術顧問の吉田明さん(62)ら土木学会の8人は震災4カ月の11日、がれきの再利用に協力するため仙台市役所を訪れた。市は今回の津波が太平洋岸を走る高速道路の盛り土によってある程度せき止められた経験から、海側を走る県道をがれきに混じる土砂で盛り土し“防
潮堤”にできないか検討している。
欧州とアジアを結ぶトルコ・ボスポラス海峡の海底鉄道トンネル工事にも携わった吉田さんは「技術面から復興の役に立ちたい」と話す。名取、岩沼両市も高台の造成にコンクリ片を使うことを考えている。
いまだ児童6人が行方不明の石巻市立大川小学校では12日も捜索が続いた。廃虚と化したモダンな校舎の周りはがれきがコンクリ片や車、タイヤ、鉄類などに分別され、それぞれ山をなしている。捜索でがれきを撤去した結果、そのまま仮置き場となった。
木材系のがれきは破砕機を使いその場でチップにし、一部は8キロ先の山腹に広がる市営牧場へ運ばれた。黒毛和牛が放牧される牧場の土と混ぜられ、微生物の働きにより分解されて牧草の堆肥になる。中には分別し切れず残ったゴム手袋やサンダル、小さなウサギのぬいぐるみなど人々の生活の証
しが交じっていた。
重機を操り木くずと土を混ぜていた松川秀之さん(56)は作業の手を休め「小学校に置いたままでは復興も何も始まらない。初めの一歩だね」と話した。
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大川小の周囲にあるがれきの仮置き場でチップにされ、牧草の堆肥にするため市営牧場へ運ばれた木くず。眼下に北上川がゆったりと流れていた=宮城県石巻市
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