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- ID:
- 49355
- 年度
- 2011
- 月日:
- 0105
- 見出し:
- 県産スギを積極活用 「鉄から木」への転換も
- 新聞・サイト名:
- 秋田魁新報
- 元URL:
- http://www.sakigake.jp/p/special/11/morinokuni/article1_02.jsp
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 山積みになったスギの丸太が1本ずつ、鋭く研磨された鋼の刃に自動でセットされる。ボタン一つで丸太は高速回転を始め、わずか10秒足らずで薄い板状にスライスされていく。
スギの丸太を板状に加工する秋田プライウッド向浜工場の製造ライン
国内一の合板生産量を誇る秋田プライウッド(秋田市川尻町、井上篤博社長)。生産拠点の向浜工場では、針葉樹の丸太を加工して月4万立方メートル近い合板を製造。同社の国内シェアは16%を占め、年間売上高は150億円を超す。
強度や耐久性に優れた構造部材や内装材は、薄い板状に加工した針葉樹を3~9層に重ね合わせることで生み出される。同社はこれまで材料の大半を外国産材に頼ってきたが、地球環境の保護や国内の森林再生に対する関心の高まりを背景に、2001年から国産のスギやカラマツなどを積極的に活
用。今では素材の8割が国産材に切り替わった。
合板の特長は、間伐材や多少曲がった規格外の木材を使用できる点にある。同社が主に使用するのは35~40年の間伐材。渡辺一徳専務(63)は「目に触れる表面や裏面はロシア材で、それ以外は主にスギ。強度的にも全く問題ない」と強調する。
同社は1カ月に使用する素材6万1500立方メートルのうち、4万立方メートルを国産のスギに転換する計画目標を掲げている。ただ、実際の使用量は3万立方メートル程度にとどまる。このうち県産スギは66%で、素材購入に年間30億円を費やす。「できればもう1万立方メートル(月間)を県産材に切
り替えたいが、供給が追いつかないので隣県や北海道の針葉樹で代用している」(渡辺専務)
同社にも外材頼みの時代があった。もともとは鳥海山麓のブナを使っていたが、戦後復興や高度経済成長に伴って住宅部材の需要が伸び、東南アジアの熱帯産広葉樹を輸入してきた。だが供給地の熱帯雨林や生態系は崩壊し、地球規模の環境破壊が問題となった。一方で国内の山林は育林されない
まま放置され、自然災害に対して脆弱(ぜいじゃく)だった。同社は「高度成長を支えるには外材が不可欠だったが、その歴史的な役目は終わった」とみる。
そうした状況を経て外材から国産材へ。さらに、住宅着工の減少に伴う合板需要の低迷をにらんで「鉄から合板」への転換も図る。例えば工事現場の鉄板や遮音壁も合板に切り替えが可能で、強度や防音効果も実証済みだという。
材料を海外から輸入して都市部の工業地帯で製造加工する鉄に対し、合板は素材を山から切り出し、地場で生産する。渡辺専務は「木を積極活用すれば地方で雇用が生まれ、育林も進む。地方を潤すのは鉄よりも木だ」と木材産業に可能性を見いだす。
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