v10.0
- ID:
- 50653
- >年度
- 2011
- >月日:
- 0606
- >見出し:
- 被災地支援の輪(その2止) 「東北の木」生かして
- >新聞・サイト名:
- 毎日新聞
- >元URL:
- http://mainichi.jp/life/ecology/news/20110605ddm010040016000c.html
- >写真・動画など:
- なし
- >記事内容
- 仮設・復興住宅を 伝統「板倉造り」もとに
東日本大震災の被災者を受け入れる仮設住宅や新たな生活を始める復興住宅を、国産の自然素材で建てようという動きが進んでいる。東北は豊富な森林資源がある。地場産の木を使い、地元の職人が建設することで、被災地の復興と地域活性化につなげようという試みだ。【明珍美紀】
福島県いわき市の中心部から南東へ車で約15分、いわきニュータウンの整備中の区域で今月初め、約160戸の木造の仮設住宅の建設が始まった。
建築は、スギ材を主体にした「板倉構法」で、4寸(12センチ)角の柱や土台などに溝を掘り、そこに1寸(3センチ)の厚板をはめ込んで壁や床、屋根を仕上げていく。
「石油ではなく木を使う。空調に頼らず、木材の持つ断熱性と、室内の湿度を安定させる調湿性によって、被災者にできるだけ快適な居住環境をつくることが、木造の仮設住宅の意義」と設計した筑波大大学院教授の安藤邦廣さん(62)は説明する。しかも木造なら、役目を終えて解体された木材を、被災
者の復興住宅に再利用できる。
材木は天然乾燥で、断熱材にはもみがらとススキを使用するなど自然素材の家。タイプは2DK(約35平方メートル)の平屋が中心で、2LDK(約40平方メートル)や単身向けの1DK(23平方メートル)もある。屋根は三角。小さな屋根裏部屋がつき、軒下があるので縁側もできる。
安藤さんは日本に古くからある「板倉造り」を取り入れた独自の板倉構法を開発した。NPO「木の建築フォラム」の代表理事も務め、木造の仮設住宅の意義を福島県などに提案してきた。「今回は福島の県産材は4割程度。残りは板倉の家づくりの木材供給拠点である徳島県から取り寄せる」という。福島
県三島町の佐久間建設工業など中小の建設会社でつくる「奥会津IORI倶楽部」が建設を手がけ、7月末までに完成させる計画だ。地元の職人たちへの説明を兼ね三島町に試作の住宅も建てた。
震災と東京電力福島第1原発事故により、同県では市町村から要請のあった1万4000戸を災害協定に基づき、プレハブ建築協会(東京都千代田区)に発注する準備を進めていた。だが「地元にも仕事を」などの声が上がり、うち4000戸を公募制にした。板倉構法も公募で選定された。「公募では鉄筋、
鉄骨は500戸のみ。あとの3500戸は木造でログハウスなどもある」(同県建築住宅課)という。
「大切なのは、仮設に使った木材を本設の住宅に生かすこと。東北の復興の第一歩は、森林から」と安藤さんは説く。
◇地域経済活性化、ビジネスモデルに--天然住宅バンク
一般社団法人「天然住宅バンク」(東京都目黒区、03・5726・4226)は「仮設じゃない『復興住宅』プロジェクト」を始動した。
「震災で家を失った人々が安心して生活できる住宅を」と同バンクでは東北の木材を生かした伝統工法(板倉造り)の建築プランを考案した。宮城県栗原市の栗駒山の山林から切り出したスギやヒノキの無垢(むく)の木材を使い、壁の素材や壁紙の接着剤なども天然成分のエコ住宅だ。
「山側で加工し、現場で木組みをする。工期は基礎工事を除けば2週間程度。雇用をつくるために地元の工務店が請け負う仕組みにする」と設計を手がけた建築家の相根昭典さん(57)は言う。
間取りは2Kが中心で価格は450万円程度(人件費込み、税別)。6月下旬には宮城県気仙沼市の協力者の敷地に広めのモデルハウスを完成させ、ソーラーシステムや太陽光温水器、コンポストのトイレなども取り付ける。
同バンクでは、被災者が復興住宅を建てるための低利(2%単利)の融資事業を始め、出資者(一口5万円以上)や寄付者を募っている。「バンクの融資と補助金などを組み合わせて少しでも被災者の負担を軽くする。将来も活用できる復興住宅を東北のみなさんの力で建て、地域経済を活性化させるビ
ジネスモデルにできれば」と相根さんは強調する。
◇進化する「合掌の家」 岐阜・高山の工房がリユース提案
岐阜県高山市の工芸村「オークヴィレッジ」では、組み立て・解体が容易にでき、「復興住宅に進化する仮設住宅」を提案している。
国産のスギ材を用い、必要最小限の資材と労力で居住空間を造ろうと考えた結果、家の形が三角形の「合掌の家」になった。広さ約30平方メートルの1K(屋根裏部屋付き)で、本体価格は250万~300万円(人件費込み、税別)。解体後は復興住宅にリユースし、新たに建てる1階部分に載せて2階部
分に充てる。
東京都港区のスパイラルガーデンで5月、合掌の家のモデルハウスが展示された。オークヴィレッジ代表の稲本正さん(66)は「プレハブの仮設住宅は使用後、ごみとして廃棄されることが多い。各県では仮設住宅の発注が終わったところも多いが、日本の豊かな森林資源を活用することで林業の活性化
につながる」と訴える。
◇環境教育DVD、配布先を募集中--「そらべあ基金」
NPO法人「そらべあ基金」(市瀬慎太郎代表)は、DVDの環境教育教材「そらとべあとみんなの地球(ほし)」を作製し、希望する小学校に配布する。
環境教育の授業の導入部に役立ててもらおうと企画した。地球温暖化の原因と影響、再生可能エネルギーとは何か、子どもたちが家庭で取り組めるエコアクションなどを紹介している。
「そら」と「べあ」は、地球温暖化の影響で北極の氷が解け、母親とはぐれてしまったホッキョクグマの兄弟の名前。教材をつくるにあたり、協賛企業「そらべあキッズ応援隊」を募った結果、12社の協賛を得た。
教材は約20分で、指導者向けの手引書付き。1本のDVDには小学校版だけでなく幼稚園・保育園版も入っており、学年やレベルに合わせて使い分けることもできる。
配布対象は全国の小学校1000校。締め切りは6月30日。
そらべあキッズ応援隊ホームページ(http://www.solarbear.jp/oentai/)にある申込用紙に必要事項を書き込み、メールかファクスで。【須藤晃】
◇「森は海の恋人運動」 沿岸漁業の再生へ3本柱
宮城県気仙沼市でカキ養殖業を営む畠山重篤さん(67)が展開する「森は海の恋人運動」を緊急支援する研究会が4月30日から2日間、気仙沼市と岩手県一関市で開かれた。
東日本大震災では、カキの養殖場が壊滅的な被害を受けた。「海の栄養源は森から来る」と植林活動に力を入れてきた畠山さんを励まし、復興への糸口をつかもうと交友のある「国際日本文化研究センター」の安田喜憲教授らが呼びかけ、三重漁連、東北大、京大、医療機関などの関係者約80人が集
まった。
初日は気仙沼市街やカキ養殖場の被災地を視察した。2日目は一関市内のホテルで話し合い、沿岸漁業の再生を柱とした東北復興計画をまとめた。その中の「沿岸漁業再生のための緊急提言」では、「漁船の確保」「漁港の整備と再開」などを盛り込んだ。また、「東北復興再生のための3つの柱(中長
期ヴィジョン)」では「東北の風土と歴史そして伝統文化」「ものづくり」「医療先進地域の創設」の3点を土台にした再生計画の必要性を訴えている。
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