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- ID:
- 49258
- 年度
- 2010
- 月日:
- 1221
- 見出し:
- 荘川桜、移植から50年 旧村民、今も郷愁
- 新聞・サイト名:
- 岐阜新聞
- 元URL:
- http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20101221/201012210858_12476.shtml
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
-
高山市荘川町の荘川桜(県天然記念物)は24日、移植から50年を迎える。戦後、電力の開発という国策によりダムの湖底に沈んだ集落から移植され、古里を惜しみながら去った230戸、約1200人の心のよりどころとなってきた2本のアズマヒガンザクラ。一人、また一人と元住民が亡くなる中、古木は悠
然と季節を重ねている。移植から半世紀、当時を知る人たちの郷愁の念が交錯する。
ダム湖の湖底に沈んだ中野地区の中心にあった中野郵便局。湛水(たんすい)の始まる直前まで残っていた元局員吉田瑞穂さん(76)=岐阜市=は「50年は長くもあり、短くも感じる。荘川桜への思いはどこか感傷的になる。年を重ねたせいだろうか。最近、当時の夢ばかり見る」と話す。
弟の輝穂さん(73)=高山市荘川町=は毎春、荘川桜を訪ね樹勢を確認している。「今年も来たぞ、今年も来たんだぞ、と木に話し掛けるんです。自分の古里を知る数少ない存在だから」
2本のうち光輪寺の桜は、中野小学校の運動場脇にあり、周辺は子どもたちの格好の遊び場だった。一方の照蓮寺の桜は、光輪寺から約300メートル離れた中野郵便局に覆いかぶさるようにそびえ立ち、その姿は力強かったという。
森542件利之さん(73)=同市荘川町=は照蓮寺の桜が移植される様子を見ていた一人だ。「あの桜の木がこもでぐるぐる巻き。痛々しく心配だったが、今の姿は移植前よりさらに大きく、枝ぶりも立派になった」と目を細める。
荘川桜の2世を育て、植樹を希望する全国の人たちへ贈る活動をしている人がいる。旅館経営の道下隆司さん(63)=同市荘川町=だ。「荘川桜は荘川の誇り。桜がたどった歴史を伝えなければいけないと思った」と活動を始めた動機を語る。1990(平成2)年から贈った2世は1200本に上るという。
今月4日、旧荘川村が育てた荘川桜の2世が、桜の名所として知られる東京都千代田区の千鳥ケ淵に移植された。満開となる来年3月、元住民ら関係者が出席し、現地で式典が行われる予定だ。
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