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- ID:
- 48503
- 年度
- 2010
- 月日:
- 1104
- 見出し:
- 「永遠の杜」目指し 主幹技師 沖沢幸二さん(64)
- 新聞・サイト名:
- 産経新聞
- 元URL:
- http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tokyo/101103/tky1011031509003-n1.htm
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 「夕方、オシドリの声が聞こえた。姿はまだ見ていないけど越冬に戻っている」「オオタカが同じ巣で繁殖した。エサが豊富なのですね」
林野庁から移って10年。日々、四季の移ろいを感じている。
明治神宮の社殿を包む森は約70万平方メートル。武蔵野の雑木林を思わせるシイ、クス、コナラなど広葉樹が葉を広げ、微生物から虫、鳥まで数え切れない命が息づく。
明治・大正期の実業家、渋沢栄一の呼びかけに全国から献木が殺到。内務省の吉田茂らが約10万本すべての植樹を決断した。一本一本に人々の思いが込められた、世界でも稀有(けう)な人工林だ。
当時の「林苑計画」は、“永遠の杜(もり)”を念頭に「西は密植し防砂林に」などと詳述、150年後の姿も描かれている。今も管理の指針となっており、常に「林苑計画」の通りになっているかを心がけているという。
「いまや森自体の力で世代交代しながら続く森林に成長しました」。自然更新する森は、大木が力尽きても、光が入り、後継の若木が育つ。
「人が代わるたび方針が変わるのでなく、鎮座100年に向けて森を守り、150年、200年につなげたい」
一方で、参拝者の頭上に落ちないように参道の古枝は除くなどの配慮も欠かせない。民家が数軒だった原宿は若者の街になり、参拝者は1千万人に上る。安全が第一だ。
「参拝者の『むやみに入らない』『実や葉を持ち帰らない』という心遣いのおかげで、豊かな森になっている気がします」
夢は、いつ枯れたのか記録もない桜小路のオオヤマザクラの花が、また満開になることだ。
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大正9年に創建された明治神宮が鎮座90年を迎えた。都心に広がる広大な“神域”で献身する3人の姿を報告する。(文 牛田久美、写真 古厩正樹)
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