v10.0
- ID:
- 48478
- 年度
- 2010
- 月日:
- 1102
- 見出し:
- 開発進むニセコ 外資との距離探る
- 新聞・サイト名:
- 朝日新聞
- 元URL:
- http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000001011010002
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 海外資本の高級リゾート開発が一段と進み、外国人による山林や宅地購入も目立つニセコ町。さらなる観光客の増加に期待が高まる一方で、実態がはっきりしない業者の乱開発への懸念も出てきた。加速する国際資本の流入を前に、同町はいま、町づくりや環境保全や保護など、町として「どう向き合うか
」を模索している。
(三木一哉)
■高級リゾート建設 地元歓迎
ニセコアンヌプリスキー場近くの道道沿いに、ニセコの今を象徴する鮮やかな青の看板が立っている。「カペラニセコ」。2012年夏の開業を目指す高級リゾートの建設予定地だ。オーナーは香港資本の不動産開発会社。運営は世界各地でリゾートを展開する米国のホテルグループで、ニセコでは70室の
ホテルのほか別荘など150戸を分譲する。設計は建築家の安藤忠雄氏だ。
同町内では今年3月、旧西武グループのリゾート施設を、マレーシアの建設コングロマリットYTLグループが買収した。この数年来、海外資本による開発が目立ち、町への届け出が必要な1ヘクタール以上の土地取引も、07年からこれまでに20件を超えた。
景観や環境が海外で高く評価されているためで、片山健也町長も「こうした開発は雇用を生み、波及効果もある」と歓迎する。一方で、「一過性のチャンスに浮かれるのではなく、町のあり方と外資のビジネスの方向性を合わせることが重要」と話す。これらの企業を「街づくりのパートナー」として協力し合おうと
いうわけだ。
町長自身、YTLの経営者に会い「環境を大切にしてほしい」と要請。最近は町が開催する都市計画のワークショップにも外資関係者が参加するようになり、「日本の企業より外資の方がニセコの町づくりに協力的」と評価する。
今後、さらに外資系のホテルが増えることも見越し、外国人が家族で地域に住める生活環境やインフラ整備も進める意向だ。
YTLの進出が縁で、町立ニセコ高校は来年から修学旅行先をマレーシアに決め、YTLグループのホテルマン養成学校で研修も受ける。リゾート開発から始まった双方のつながりを、若者の教育にも広げる試みだ。
■実態つかめぬ計画も
だが、いい話ばかりではない。役場に訪ねてきた「開発業者」が、買収地でのリゾート計画を説明しながら、担当者が調べてみると地権者と話もしていなかったというような例は少なくない。町に届ける必要のない1ヘクタール以下の取引の把握はできず、外資がどの程度入ってきているか、同町も詳しいことはわ
からないのが実態だ。
中国の富裕層などによる投機目的の住宅建設も指摘され、中国ビジネスに詳しい北大大学院東アジアメディア研究センター長の渡辺浩平教授は「中国資本は、資産の海外逃避など、利潤を上げる以外の目的があるかもしれない。日中関係をはじめ政治の波を受け、計画が行き詰まる恐れもある」と、リ
スクを理解する慎重さも必要と強調する。
こうした中でいま町が取り組んでいるのが、水資源を守るための地下水源保護条例と水道水源保護条例の策定作業だ。別荘やホテルの増加とともに、所有者が地下水を野放図に使って枯渇させたり、開発で水源が汚染されたりするのを未然に防ぎ、環境資源を保全するのが狙い。
両条例とも、今年度中の制定を目指している。水道水源は現在、町内に15カ所あるが、うち民有地にある5カ所を町が買収、水源地一帯の森林ごと保護するほか、水道水源の汚染につながる行為に罰金を科すという。
■「オールニセコ」 世界にアピール
環境面のガードと同時に9月からは、隣接の倶知安町と「広域観光局」の設置を目指して検討も始めた。両町が「オールニセコ」で世界のマーケットにPRする構想だ。オーストラリア人スキー客に人気の高い比羅夫地区がある倶知安町は現在、国内シニア客や欧米に向けた宣伝に力を入れている。ニセコ町は、2人いる外国人職員を、来年度は5人に増やす計画もある。
小樽商大ビジネス創造センター長の海老名誠教授は「日本人観光客と国内企業の投資が減っている現状で、外国からの投資を増やそうと努力するのは当然の戦略。外国人にとっての北海道の魅力をもっと理解し、外資を怖がらず、安売りせず、付加価値をつけて売る努力が望まれる」と話している。
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