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- ID:
- 47941
- 年度
- 2010
- 月日:
- 0930
- 見出し:
- 跡調査開始から50年 外郭南門復元「来年度予算で」 市長表明
- 新聞・サイト名:
- 毎日新聞
- 元URL:
- http://mainichi.jp/area/miyagi/news/20100929ddlk04040071000c.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
-
資金10億円「来年度予算で着手」
多賀城市の菊地健次郎市長は28日の9月定例市議会で、国特別史跡・多賀城跡の「外郭南門」復元計画について「来年度予算で緒につけたい」と表明した。1989年に復元計画がスタートしたが、市の財政悪化などが原因で凍結していた「史都のシンボル」づくりが、再び動き出すことになった。ただ、復
元には約10億円の資金が必要とされるため、市は南門復元の必要性について市民の理解を得る必要がある。【渡辺豊】
8月の市長選で無投票再選された菊地市長は、この日の議会で、「どのような手順で実現するかを含めて予算を付けたい。2021年の市制50周年か、24年の多賀城創建1300年に向けて完成を目指す」と南門復元方針を表明した。
外郭南門は多賀城の「正門」で、中心部の政庁跡から約300メートル南の丘にあり、城外の「古代都市」の南北大路につながっていた。
多賀城のシンボル的な建造物にしようと同市は1989年、「ふるさと創生1億円」を活用し立体復元事業に着手。94年には総工費が約9億円の設計書もまとめた。しかし、市長交代や水害などがあり都市基盤整備に追われたほか、バブル崩壊による財政悪化も重なって計画は約20年間凍結されていた。
今回の復元計画によると、南門は762年修造の多賀城2期の姿を復元する方針。二重門で、幅10メートル、奥行き6メートル、高さ13・5メートル。門に連なる塀は、土を固め屋根を乗せた築地(ついじ)塀で、基底の幅3メートル、高さ4・5メートル。門の両翼計50メートルを復元する予定。修造当時の
姿を忠実に再現するため、材料は木材や瓦などを使い、くぎを使わない木組みの工法で再現する。
南門復元の総工費について、同市は現時点で約10億円と試算している。同市は積み立ててきた「史跡のまち基金」を活用し、財源を捻出(ねんしゅつ)する方針だ。さらに、年内に多賀城跡を中心とする「歴史的風致維持向上計画」を策定。国の「歴史まちづくり法」に基づいて認定されることを目指し、国か
らの財政支援を得たい考えだ。
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■視点
◇一体のアピール必要
多賀城跡の「外郭南門」の復元が、当初の計画着手から20年を経て再び実現に向けて踏み出した。南門は史跡を生かすまちづくりの「核」になるのか、「ハコモノ行政」になるのか。この問題は現時点から市に突きつけられている。
多賀城跡は奈良・平城京、福岡・大宰府とともに三大史跡と呼ばれ、「古代の原風景」と貴重な遺構・遺物への評価は高い。一方、「シンボルがない」と言われる。年間観光客は多賀城が約70万人なのに対し、大宰府は多賀城の約10倍、奈良は20倍の観光客が訪れている。
多賀城の最大の特色は「丘陵を生かした立地条件」。朱塗りの壮麗な門が復元されれば古代の風情やまちの品格は高まり、地域活性化につながるだろう。
だが、約10億円の総工費は大事業だ。門の復元だけで観光振興やまちづくりが成就するという考えは早計だ。
復元を起爆剤にするためには、市と市民はもちろん、史跡調査や整備を分担する県や文化庁も一体となり多賀城跡の価値を再認識し、アピールしていくかにかかっている。
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