v10.0
- ID:
- 47400
- 年度
- 2010
- 月日:
- 0825
- 見出し:
- 遊びのなかの色と形 クルト・ネフ&アントニオ・ヴィターリ 5
- 新聞・サイト名:
- エキサイトイズム
- 元URL:
- http://www.excite.co.jp/ism/concierge/rid_19963/pid_7.html
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 次にヴィターリ氏の展示室へ。アントニオ・ヴィターリ氏はもともと彫刻を学んでいたが、自分の子どものために玩具を作ったことがきっかけで玩具製作の世界に入る。丸みを帯びた抽象化されたフォルムが特徴的で、その中にも動物や人間らしさがにじみ出ており不思議な魅力のある玩具だ。
ヴィターリ氏の代表作とも言える「Glucke(とりの親子)」。にわとりのお腹はくりぬかれており、3羽の小鳥が収納できるようになっている。ヴィターリ氏は、1952年にバウハウスのマックス・ビルが自著「Form」の中で紹介、その後ウルム造形大学で展示されたことで一躍デザイン界で有名になった。ネフ社で玩具を
作るようになったのは、そのあとのことである。
これは制作工程と金型。金型に沿って成形されていく途中で、木の節目や穴が見つかることがあり、そういった製品はラインから省かれていくのだ。2009年にチューリヒデザイン美術館で開催された「ヴィターリ生誕100年展」で展示された作品やスケッチ、パッケージなども巡回展示されている。ヴィターリ氏は、
1992年に自身の作品をすべて同館に寄贈している。
どの作品もそうだが、ヴィターリ氏の作風はほぼ1940年代くらいから変わっていない。人体や動物のフォルムを抽象化し、そこに動きや表情を与えている。見る人の気持ちによって、非常に豊かな表情を返してくれるのだ。
また、最後にはヴィターリ氏にしては珍しい16mmのフィルム作品がある。「キツネとガチョウ」というグリム童話をもとにした作品で、自身で作った木製の木やキツネ、ガチョウを用い、コマ撮りと動画を組み合わせた手法で話は進む。人形に当てる照明の角度で表情を演出したり、手作り感溢れる映像はファン必
見だ。 「ノアの方舟」。これは1984年にヴィターリ氏の生誕75歳を記念して開かれた展覧会がチューリヒデザイン美術館で開催された際に、同市内の玩具店「パストリーニ」のために制作され店のウィンドウで展示したものだ。
すべて1点ものである。ヴィターリ氏は木彫作品を作るためにいくつもの素材を試していた。なかでも晩年に訪れたコスタリカで出会ったゼブラウッドに惚れ込んで玩具で使用するべく画策したが、生産ラインに乗せるのが技術的に困難で断念していた。この作品では、チークやゼブラウッドなどさまざまな素材を
用いている。木目の出方まで細部に気を遣って削られ、磨かれた動物や人間たち。その小さな体には魂が宿っているようにも見える。
目黒区美術館といえば、良質な積み木や玩具を積極的に「トイ・コレクション」として収集してきており、その玩具を用いたワークショップやアウトリーチ活動を行っている。スイスネフ社の玩具もそのコレクションのひとつで、今回の展示でもネフやヴィタリの玩具は、一部実際に触って遊ぶことができるようになってい
る。
玩具の展示は、美術作品とは違い、遠くから見て美しさを堪能するだけではなく実際に触れて使ってみなければ分からないことも多い。木のつるつる感、積み木を重ねていくことの面白さ、大きく積み上げた積み木を崩した時の音の心地よさ、無限の可能性を秘めた色と形。ぜひ、手で触って、手で感じて、手
で遊んで、展覧会を楽しんで欲しい。9月12日まで。
最後に、ヴィターリ氏の言葉をひとつ。
子どもにとって玩具というのは、「おもちゃ」ではなくて「友だち」でなければならないと思う。その友だちがいつもそばにいることによって、子どもが自信を持ったりできるようなものでなくてはならないのです。私はそういう気持ちで玩具を作っています。
(「EDU-TOY~ネフとヨーロッパの木製玩具たち」小柳帝著/プチブラパブリッシング刊)
遊びのなかの色と形 クルト・ネフ&アントニオ・ヴィターリ
目黒区美術館 東京都目黒区目黒2-4-36
開催中~9月12日(日) open.10:00~18:00(入場は17:30まで)月休、一般¥700
お問い合わせ:目黒区美術館 tel.03-3714-1201
..