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- ID:
- 46907
- 年度
- 2010
- 月日:
- 0721
- 見出し:
- ウッドヘンジ、夏至の儀式の場か?
- 新聞・サイト名:
- ナショナルジオグラフィック
- 元URL:
- http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20100721001&expand&source=gnews
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- アメリカ、オハイオ州の都市シンシナティの北東部郊外で見つかった“木製のストーンヘンジ”は、考古学者チームの発掘調査によりその謎が解き明かされつつある。建造の目的には諸説あるが、約2000年前に儀式の場として使われていたことを裏付ける新たな証拠が見つかった。最近の研究によると、かつて
は木柱が環状に配置されていたこの遺跡は、イギリスのストーンヘンジのように、夏至などの天文学的な事象を祝うために使用されていた可能性が高い。
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遺跡の正式名は「ムーアヘッドサークル(Moorehead Circle)」だが、「ウッドヘンジ(Woodhenge)」という呼び方が一般的だ。かつては、皮を剥いだ木柱が環状に立てられていた。不規則な同心円状の配置で、サークル全体の直径は57メートルほどある。
いまでは岩石でふさがった柱穴が残っているだけで、その周囲にはフォートエンシェント州立記念公園(Fort Ancient State
Memorial)の謎の土塁群が巡らされている。何百メートルという大きさの土塁もあり、すべて農耕開始以前のアメリカ先住民が築いたものだ。紀元1~9世紀当時のホープウェル文化は、北アメリカ大陸中西部から東部にかけて繁栄した。
2010年、考古学者チームは、ムーアヘッドサークルの分析にコンピューターモデルを導入した。すると木柱の配置に、イギリスのストーンヘンジと予想以上の共通点が見いだされた。天文学をベースにした意図的な並べ方だったのだ。
「コンピューターを利用すれば、航空写真や発掘分布図、さらにはデジタル画像まで、さまざまな地理的データを組み合わせることができる」と、今回の発掘調査を率いたオハイオ州デイトンにあるライト州立大学の考古学者ロバート・リオーダン氏は説明する。
これまでの調査でも、環状列穴群、遺跡の周囲に築かれた人工の囲い、石塚、近くの土壁の門などが、すべて一直線上に並んでいることはわかっていた。
今回の研究で、北半球で昼の長さが最も長くなる夏至の日にムーアヘッドサークルの中心部に立つと、朝日が土壁の門から昇るように配置されていることが明らかになった。イギリスのストーンヘンジでも、環状列柱の外側にあるヒール・ストーン付近から夏至の朝日が昇り、中央の祭壇石に光が当たるという
同じような現象が見られる。
2005年、公園関係者は地中探知技術を使い、ムーアヘッドサークルで最初の穴を発見した。以来、リオーダン氏のチームは数百個の穴を特定している。「直径約30センチ、深さは最大1メートルあり、カシやヒッコリー(クルミ科の広葉樹)など土着の樹木の皮を剥いで作った木柱が立てられていたようだ」とリオ
ーダン氏は言う。木柱の高さはおそらく地面から3~4メートルほどで、柱同士の間隔はわずか数センチの場合もあった。
サークルの最も中心では、赤みを帯びた焼かれた土に混ざって数百の陶器の破片が地面に敷き詰められていた。
2007年には、リオーダン氏の発掘チームが砂利だらけの土の下から、灰と粘土で埋まった溝を発見している。溝の配置は、既に消滅してしまった木柱の配置パターンを模倣したものだった。「木柱もそうだが、この溝が何のために掘られたのかまったく不明だ」とリオーダン氏は話す。
古代民族にとって、ムーアヘッドサークルの建造は大変な事業だったろう。「穴をいくつも掘り、切リ倒した木を運搬して適当な大きさに切ってから、樹皮を剥いで柱穴に立てたのだろう」とリオーダン氏は推測する。また、1.6キロほど先の標高76メートルの丘から、石灰岩も運ぶ必要があった。岩は砕かれ、木柱
を直立させるため穴に入れられた。
柱穴を掘るのもそう簡単ではない。シャベルやつるはしも無い時代、ホープウェルの人々には動物の骨や削った木材ぐらいしか選択肢はなかった。これだけ手間を掛けても、人々はこの建造物が長持ちしないとわかっていたに違いない。「10年もたてば木柱のほとんどが腐り、交換が必要になったはずだ。この精
巧な建造物に費やされた労力を考えると、最重要の儀式の場だったことがわかる」と、リオーダル氏は付け加えた。
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