v10.0
- ID:
- 45872
- 年度
- 2010
- 月日:
- 0503
- 見出し:
- 数百年は珍しくない。数千年の話も聞く…
- 新聞・サイト名:
- 西日本新聞
- 元URL:
- http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/169498
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
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数百年は珍しくない。数千年の話も聞く。巨木や名木の年齢を知ると、その木が生まれたころのことを想像したくなる。想像は侍の時代から縄文時代などに及ぶ
▼樹齢千年といえば平安時代だ。世界最初の長編小説といわれる「源氏物語」が浮かぶ。2008年が千年紀だった。1008年には宮中で既に読まれていたらしいことが、紫式部日記に出てくる
▼樹齢千年とされる鎌倉・鶴岡八幡宮の銀杏(いちょう)は、13世紀に事件を「目撃」する。鎌倉幕府の3代将軍・源実朝が境内で兄頼家の子・公暁(くぎょう)の手にかかって落命した。公暁は銀杏の陰で身をひそめていた、と伝えられる
▼「隠れ銀杏」とも呼ばれ、室町、江戸などを経て現代に至る歴史を見てきた大銀杏は、今年3月、根元から折れた。雪交じりの強風の夜のことだった。高さは約30メートル、幹の周囲は7メートル近くにもなっていた
▼地域のシンボルでもあった大銀杏は人々の心にも根を張っていたようだ。心配や励ましの手紙、電話が寄せられた。元通りにはできなくても、いのちを継ぐことはできる。専門家が知恵を絞っている。残った株の折損部を殺菌するなどした
▼4月に入るとそこから新芽が吹いた。芽は日々成長し、いまでは銀杏の葉の形が確認できるようになったという。強い生命力を思う。木が折れてすぐに春が巡ってきたのもよかった。新たな千年の始まりになってほしい。「みどりの日」にそんなことも考える。
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