v10.0
- ID:
- 46677
- 年度
- 2010
- 月日:
- 0702
- 見出し:
- 枯れたスギの切り株周辺にオオシマザクラを植えるボランティアら
- 新聞・サイト名:
- 朝日新聞
- 元URL:
- http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000001007010001
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 回復する緑 広がる植林産業の芽も
5月下旬の三宅島。山に入ると、南向きの斜面には数メートルに伸びたオオバヤシャブシやタブノキ、スダジイが生い茂り、瀕死(ひん・し)の木の幹から芽を出す「胴吹き」が現れ始めていた。
枯れたスギの切り株周辺に島の種から育てたオオシマザクラの苗を植えていく一団がある。2008年春から三宅村と協力し、植林ボランティアをしている「高尾の森づくりの会」(活動地・八王子市)だ。中心メンバーの渡辺美夫さん(73)は「これで5回目。初めの頃は地面の茶色ばかりが目についたが、本当
によく緑が戻った」と喜ぶ。
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「森づくりの会」のように島外から植林に来るボランティア団体は05年以降、14団体を数える。全島避難の時から支援にかかわった都立園芸高校(世田谷区)のOBなどでつくるNPO「園芸アグリセンター」のように11回を数える団体もある。継続的に来るところが多く、延べ人数は2820人、植えられた木は
4万4千本以上。三宅島の緑の復興の力になっている。三宅村森林組合の守屋広次事務長(63)は、「来てくれるだけでもありがたい。島のことを気にかけてくれてうれしい」。
回復する緑に、新たな希望を見いだす会社も出てきた。
05年5月に島内で設立された「伊豆緑産」は、関西地方の医療機関と協力して、島のあちこちに群生するサルトリイバラの薬効の研究を進めている。サルトリイバラは、病気で山に捨てられた人が実を食べたら治って帰ってきたとの言い伝えから「山帰来(さん・き・らい)」とも呼ばれるユリ科のツル植物の仲
間だ。
同社の成田信治・森林産業部長(28)は「漢方では梅毒の薬として使われ、抗炎症作用も知られているが、三宅のサルトリイバラは成分が濃く、現代病に対して有効である可能性を秘めていることがわかってきた」と話す。荒廃地の緑化や植栽ツアーなどの観光、健康を柱にした地域振興に役立てたい考
えだ。農水省の08年度「立ち上がる農山漁村」事業に選ばれた。
全国的に生息する植物だが、三宅島産はトゲがなく、採集が楽だ。火山ガスに強く、溶岩にも根を張る。
「絡まって木材の質を低めるので嫌う人もいますが、木が生えない地域の土砂崩れを防いでくれる。ありがたいツルなんです」
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伊豆緑産は横浜の建設会社が母体で、成田さん自身も含め島外出身者が3分の2を占める。植林事業などの公共事業も減る中、名産のアシタバの加工利用など雇用につながる地場産業の育成を模索している。成田さんは「サルトリイバラの花言葉は『不屈の精神』。一緒に島のために頑張りたい」。
10年前の噴火とその後の火山ガスで、島のシンボルだったうっそうとした照葉樹林は6割が消えた。しかし、緑は着実に回復しつつある。厳しさは続くが、復興に力強さも出てきた。
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