v10.0
- ID:
- 46511
- 年度
- 2010
- 月日:
- 0622
- 見出し:
- 探訪 讃岐の茶室/平田邸茶室(高松市紺屋町)
- 新聞・サイト名:
- 四国新聞
- 元URL:
- http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/culture/article.aspx?id=20100622000098
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 茶室を持つことには、いろいろな側面がある。お茶の道具の一つとして、あるいは客間や書斎といった応接の場にもなる。
戦後の復興期に建てられた多くの家に茶室が併設された事実には、あらためて驚きを感じる。当時の和菓子屋は毎朝、その日の見本を持って御用聞(ごようき)きに回っていたそうだ。茶の湯は今よりもっと身近で、日常生活にとけ込んでいた。当時の女性にとって、茶道の免状は嫁入り道具でもあった。
今回の茶室もそのような時代に建てられた。ビルに囲まれた空間に、露地(ろじ)の新緑と蹲踞(つくばい)の水がすがすがしく光る。モルタル製の蹲踞は故中川兼光棟梁の苦心作。縁を薄く仕上げた円筒形である。奥にある腰掛け待ち合いは茶室の貴人口の上がり口と直角に続いており、刀掛けが付く。軒
を支える梁(はり)はごつごつした皮付きのクヌギで、垂木(たるき)は白竹。
障子を開けて貴人口から席入りする。茶席は4畳半本勝手席。向かって右側に台目床。床柱はクリのなぐり。石灰で磨いて落ち着いた茶色に仕上がっている。床框(とこがまち)は北山杉の磨き丸太。脇に大きな連子窓。茶室の柱はすべてモドラで独特な輝きを放っている。
貴人口の正面に茶道口と色紙窓が並び、天井の右隅に両引きの障子。点前座の正面には風炉先窓もあり、採光のための工夫がある。
床前は駆け込み天井でサワラの野根板。太いコブシの梁に掛かる垂木は太めの白竹。垂れ壁に付くスギ板には、竹の断面に合わせて丁寧に切り込みがある。職人のこだわりが見事である。
壁止めのスギ丸太と点前座の落ち天井を支えるアカマツ丸太の交差が天井の景色としてうまく調和している。
..