ID :
1708
公開日 :
2006年
9月24日
タイトル
[林業改革/森林利用で合理的な施策を
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新聞名
http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/sh060924.htm
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元urltop:
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写真:
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林業改革/森林利用で合理的な施策を
不況が続く林業の復活を目指して、政府は新たな森林・林業基本計画を閣議決定し、「百年先を見通した森林づくり」を掲げた。立地条件に合った林業を推進するなど評価できるが、その一方で人材を呼び込むための
具体的な方策に乏しい。わが国国土の七割を占める森林に対し魅力ある林業をつくり出すための改革が必要だ。
公益事業とつながる必要
同計画では、木材供給量を十年後に35%増やし、国産木材の需要拡大に努める。そのために国内材を高級材として育成している林業経営者の支援を決めるなど、立地条件を勘案した木材産業の育成を提案している
。また零細な林業家をまとめ、生産コストを切り下げるための効率的な作業システムなどを普及するという。
政府はこれまでも林業の担い手を得るため、森林組合などの林業研修費用を助成したり、研修対象者が速やかに就業できるよう便宜を図ってきており、こうした就業支援も続ける予定だ。
これらの施策は当然、必要である。ただ、同計画には、現状認識に欠けている点がある。林業はこれまでも国の財政による手厚いてこ入れが行われてきた。それにもかかわらず、農業や漁業の一次産業の衰退と軌を
一にしているというものだ。問題は、いかにして林業に人材を呼び込むかである。
戦後、国有林の生産力を増強するため、生産性の低い広葉樹の天然林を皆伐して、成長が早く建築用材として優れるスギやヒノキの造林を推し進めるなど木材生産に偏ってきたことは否めない。そのため安価な外国
材が流入すると、木材の価格が低下し、森林そのものの意義が失われてしまうという結果になった。
森林に対する国民の関心を取り戻すには、森林の公益機能を保持する事業と林業のバランスをしっかり取らなければならない。
確かに同計画は、森林の多面的機能について言及している。また森林の役割には、木材の収穫のほかに、自然災害の防止、被害の軽減(減災)、水源の涵養(かんよう)、美しい自然環境および多様な動植物の保護、地
球温暖化の防止があるとし、これらは森林の再生のためにも必要な事業であるとしている。しかし、森林全体の役割を見定めた森林・林業計画や合理的な施策を立てられないでいる。
多くの若者や新卒者を、林業や森林を守る仕事に引き付けるには、公益的機能を中心にした森林事業を創出し、森林の付加価値や経済性を飛躍的に上げることだ。林業は森林事業の一部であり、環境保護や自然災害
防止などの公益事業とのつながりなくしては成り立たない。林業が生き残る道もそこにあることをはっきり認識することが必要だ。
ひところ「林業という産業は成り立たないから、森林を守る営林署などなくしてしまえばいい」というような荒っぽい意見が政治家の間で聞かれたが、全くの誤りだ。
森林事業が盛んになれば、地域と山林、都会と山間部の間の地域的、機能的な断絶は解消して、経済や暮らしの中に森林の大切さが見いだされるようになり、森林事業に携わる人たちも、さらに生きがいを実感できる
はずだ。
夢を持てる産業目指せ
幸い、自民党の安倍新総裁は総裁立候補宣言で、地方への配慮を色濃くにじませ「未来に夢を持てる農業、林業、漁業にしていかなければいけない。所得が増えていく第一次産業を目指したい」との意向を明らかにし
た。国民の共同財産である森林を復活させる施策を期待したい。