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ID :  15486
公開日 :  2010年 3月19日
タイトル
[空き教室に古民家 再現
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新聞名
静岡新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100320-OYT8T00198.htm?from=yoltop
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元urltop:
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写真:
 
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空き教室が再び学びの場になる。
 教室に足を踏み入れると、屋根が付いた古民家の居間が現れた。室内に家がある不思議な感覚。社会科の授業で昔の暮らしを学ぶ3年生は、上履きを脱いで畳に上がり、「これ、何だろう?」と興味深そうに古い足踏み ミシンなどを指さしては、その名前を紙に書き込んだ。
 横浜市立俣野小学校は2005年、児童数の減少で使わなくなった教室に、昭和初期の農家を再現した。地域の財産を残そうと、当時の校長が大工を招き、建ててもらったものだ。居間の中央に囲炉裏が据えられ、大正 から昭和中期にかけて実際に使われたテレビや柱時計が置かれている。後方のロッカーは、陳列棚に変わった。教室は「俣野ふるさと資料館」と名付けられた。
 市郊外の俣野地区は農業を営む家が多く、学校が呼びかけると、約50人から数百点の民具や農具が集まった。隣の空き教室にも脱穀機や唐箕 とうみ など、使われなくなった農具が所狭しと並ぶ。3年生が社会科の授業で使うほか、学習発表会では古民家を舞台に劇を上演した。
 地域には、ほかにこうした施設はない。西田義明副校長は「資料館がなければビデオや写真を見て学ぶしかない。俣野の伝統文化や暮らしぶりを実体験でき、いい学習になっている」と話す。
 同小の児童は1983年度を境に減り続け、現在はピーク時の4分の1以下の176人。その結果、20以上の教室が空いた。文部科学省によると、子どもの数の減少により、昨年5月時点で全国の公立小中学校の余裕教 室は、約6万1000室。このうち、99・1%が少人数教育などに活用されているが、学校以外の施設に変わるケースもある。
◎  福岡市早良区にある次郎丸中学校。子育て支援に力を入れる市は昨年10月、空いていた1階の2教室を改装し、親子交流施設「次郎丸中子どもプラザ」を開設した。平日は保育士を含む3人のスタッフが常駐し、1日 平均20~25組の親子が訪れる。室内には、カーテンで区切られる授乳スペースもある。
 周辺には同様の施設がなく、週1、2回利用する波多江奈穂美さん(44)が「寒い日は公園で遊ぶこともできないのでとても助かる」と話すなど、利用者に好評だ。
 昼になると、生徒が窓越しに赤ちゃんをあやしたり、抱っこしたりする姿も見られる。「幼い子と接することで自分の過去を振り返り、現在や未来について考えを深めるきっかけになる」と毛利一孝校長(59)は語る。
 来年度は利用している母親を講師として招き、子育ての喜びや悩みを話してもらったり、職場体験を子どもプラザで行ったりすることも計画している。空き教室は部活動などでたまに使っていたこともあり、当初、学校 側は開設に賛成していなかったが、現在では「生徒の情操教育に非常にプラス」との評価が定着した。
 現状を逆手に取った知恵と工夫が、机上では得られない経験を子どもたちに与えている。