ID :
12642
公開日 :
2009年 7月25日
タイトル
[【日本人とこころ】伊東忠太と魑魅魍魎
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新聞名
MSN産経ニュース
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/culture/arts/090726/art0907260727000-n1.htm
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写真:
写真が掲載されていました
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究極の“歪み”異形の魅力日本を代表する建築家だった伊東忠太が、魑魅魍魎(ちみもうりよう)を「これでもか!」とばかりに彫りつけたのが、東京・国立市にある一橋大学の兼松講堂。昭和2年に完成した建
物だ。大学施設課の伊藤正秀さん(58)に案内してもらったが、これは、なんというか…怪奇趣味全開ですねぇ。
「私たちは怪獣と呼んでますけど、100体近くあります。伊東先生も、相当楽しみながら設計したんじゃないですか(笑)」
全体の意匠は、中世ヨーロッパでゴシック様式が盛んになる前に主流だったロマネスク様式。建物正面に鳳凰(ほうおう)と獅子と龍のレリーフ。アーチを描く柱の基部にも怪しげな動物が浮かびあがる。館内に入ると、
梁(はり)や柱のあちこちにぞろぞろと。階段には手すりを吐く怪物も。怪物たちに運ばれて、建物が闇の世界から浮かびあがってきたような印象がある。
大学の建物というと、華やかさのあるゴシック様式が多いのだが、「こちらは土着のにおいがしますね」と伊藤さん。
きっと確信犯だ。妖怪たちを形にしたくて、忠太先生、わざわざロマネスク様式を採ったに違いない。だがそれは単に個人的願望だったのだろうか。
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話はちょっと遡る。伊東が建築史学を始めた契機について、こんなエピソードがある。伊東というより、彼の師だった建築家、辰野金吾の体験談だ。