ID :
12164
公開日 :
2009年 6月18日
タイトル
[長期優良住宅制度スタート 税で優遇、管理義務も
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新聞名
東京新聞
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元URL.
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2009061802000063.html
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元urltop:
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写真:
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住宅を「建てては壊す」から「手入れして長く使う」へ-。住宅の長寿命化を目指して国が作った長期優良住宅制度が今月始まった。構造部分が百年以上もつなどの条件を備えた住宅を認定する制度だ。長く
住めるだけでなく、中古住宅として高く売れる可能性が高まり、建て替えによる建築廃材が発生しないという社会的な意義もある。そんな制度のポイントを紹介する。 (重村敦)
愛知県春日井市で四月下旬、岐阜・東濃のヒノキや国産の杉を使った住宅が完成した。二階建て約百三十平方メートルの新居の中は木の香りが広がり、五寸角(十五センチ四方)の太いヒノキの柱がどっしりと構える。
長期優良住宅制度に先駆けた昨年の国のモデル事業に採択された住宅。柱や梁(はり)が太くて地震に強い、床下の空間が広く維持管理がしやすいなど、制度が求める規定とほぼ共通した性能を持つ。工事費約二千六
百万円のうち、二百万円の補助を受けた。
施主の会社員男性(48)は「子どもや孫が住むかは分からないが、誰かが住んでくれればうれしい」。設計、施工した岐阜県の工務店「カネダイ」の田中宏明さん(45)は「事業申請に必要な作業は大変だったが勉強にな
った。太い柱を生かし今後は長期優良住宅に取り組みたい」と意気込む。
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長寿命の住宅を行政が認定する長期優良住宅制度。良質な中古住宅を増やすことで住宅取得の負担を減らし、住み方の幅を広げるのが目的だ。資材の節約にもなり環境負荷が少ない。
認定されれば税の優遇措置がある=表。その一つは二〇一三年までに入居する場合の住宅ローン減税の拡充。住み始めて十年間、年末時点のローン残高のうち、1・2%(一二年以降の居住は1%)が所得税額から差
し引かれる。一般住宅(1%)に比べ0・2%高い。最大減税額も六百万円(年間六十万円)と、一般住宅より百万円多い。
また、自己資金で建てる場合も減税があり、性能向上にかかった経費(上限一千万円)の10%が所得税から差し引かれる。
住宅ローンのメニューでも、返済期間が最長五十年の商品を住宅金融支援機構が扱い始めた。
認定基準の柱は、耐久性などの性能と維持保全計画の二つ。性能の方は▽柱や基礎などの構造部分が百年以上持つ▽一定の耐震性・省エネ性がある▽内装・設備の維持管理や間取りの変更がしやすい-など。
意外に重要なのが、もう一つの柱の維持保全計画。住む側が適切に維持管理しないと、いくら性能が良くても長持ちしないからだ。屋根や外壁、給排水設備などを少なくとも十年ごとに点検することが義務付けられた。
併せて点検や補修を記録した“住宅履歴書”を作成する必要がある。
住宅履歴書は、住宅の不具合が見つかったときにも役立つ。明海大不動産学部の中城康彦教授は「不具合が瑕疵(かし)(欠陥)なのか、単に使い勝手が悪いのかの区別は難しい。住宅の履歴を残しておけば大きな武器
になる」と指摘する。
気になるのは建築費。国土交通省は標準的な性能強化費用を、木造で床面積一平方メートル当たり三万三千円、鉄筋コンクリート造りで同三万六千三百円などと試算。木造百平方メートルの場合、一般住宅より三百三十
万円も増えることになる。ただ、従来の仕様で性能を満たす住宅もあり、ウェブサイト「住まいの水先案内人」を運営する堀清孝建築士は「実際の上乗せ額は多くても百万円程度」と見る。
こうした中、国は中小工務店で建てた場合に工事費の一割以内、最大百万円を補助することにした。対象は五千戸程度。
注意したいのは、認定はあくまで書類だけで行うこと。欠陥住宅被害東海ネット副代表の寺西利行建築士は「一般の住宅と同様、設計通りに施工されているかを工事監理者がしっかりチェックする必要性は変わらない」
と強調。併せて「維持管理につけ込む工事業者が出てくる恐れがある」と注意を呼び掛ける。
<長期優良住宅> 構造部分を維持管理し、内装・設備を更新して世代を超えて住めるようにした住宅。集合住宅も含まれる。国土交通省によると、取り壊される住宅の平均築後年数は英国七十七年、米国五十五年に
対し、日本は三十年と非常に短い。住宅を建てては壊し、お金や資源を住宅につぎ込む社会を変えるため、長期優良住宅の普及促進のための法律が昨年、公布された。