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木造建築のネツト記事
ID :  11610
公開日 :  2009年 4月27日
タイトル
[社寺建築の「曲線美」追い求める   宮大工、田辺揮一郎さん
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新聞名
MSN産経
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/chiba/090428/chb0904281035004-n1.htm
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写真:
 写真が掲載されていました
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  「なぜ私にこのような名誉な章が…。まだ早いと思う」。年季の入った太い指に目を落とし、謙虚に受章の喜びを語った。
 中学卒業後、すぐに叔父である親方に弟子入り。手がける建築は住宅がほとんどだったが、地元、高瀧神社の御輿(みこし)や手水(ちょうず)舎の屋根替えなど、「お宮」の仕事にも携わっていたという。東京の会社から 誘いを受けたことを機に、5年間の見習い期間後に20歳で上京した。
 7年間の東京生活を終えて28歳で独立。「お宮が好きだった」というが、最初は住宅を手がけた。「社寺建築には旅がつきもの」だからだ。子供の独立を待ってようやく宮大工の仕事を再開した。茨城県、山梨県…と依頼 があればどこへでも行く。住み込みで作業するため、家に帰るのは週に1回あるかないか。まるで単身赴任だ。 銚子市の「猿田神社」は本殿や鳥居などすべての作業が終わるまで6年もかかったという。だが手水舎の建 築で、住宅建築の経験を生かし、柔軟な発想で耐震性を高めるために特注のボルトを溶接。この功績で平成19年に「現代の名工」を受賞した。
 社寺建築の魅力をたずねると、「曲線美かな」。「お宮の造りはすべて曲線。屋根も軒先も反っている。反り具合で格好が決まる、そこが個性の発揮どころ。それがおもしろい」と目を輝かせる。
 お宮への情熱は尽きない。彫刻家が担当する社殿の彫刻も自分で手がける。「現場で彫刻の仕事を目で盗んだ」という。昼は建築、夜は作業場で黙々と彫刻を彫る。あくまで彫刻は趣味で無報酬だという。目標は「小さ くてもいいから、作品として1人で何か作ること」と芸術家の顔で話す。
 「出張続きで、その間の衣食住の心配もある。気の遠くなるような長期間の作業もあるし、冬場もつらい」。だからこそ「好きじゃないとできない仕事」という言葉に静かに誇りを込めた。