ID :
11518
公開日 :
2009年 4月27日
タイトル
[「やせ我慢」続け技能次代に継承 黄綬褒章 建築大工・和田三郎さん
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新聞名
MSN産経
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/090428/stm0904280503000-n1.htm
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写真:
写真が掲載されていました
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パソコンの計算に基づいてつくられた「プレカット材料」を組み上げる手法が主流の建築業界で、「ピタッと合う材料を自分の手でつくり出すのが大工として一番の花形」と、直角物差し「差し金」を使って建築
材料をつくり出す伝統的な技術、規矩(きく)術にこだわる。
業界の第一人者だが、この手作業では手間やコストがかかり、年間1棟も完成できない。「やせ我慢しながら、パートタイマーより安い時給で働いていますよ」と苦笑いする。
ふじみ野市で工務店を営むかたわら、長男の智一さん(35)ら後進の指導にも力を注ぐ。技能五輪など国内外の大会の問題作成を平成20年まで15年間手がけた。
手作業で行う問題作成は綿密な計算が必要で、年間の半分は「仕事をしながら明け方まで問題をつくる毎日だった」。しかも問題作成はボランティアだ。
そんな苦労を続けたのは、かやぶき屋根の職人だった父の「技術は自分のものじゃない。親方から借りたもので、借りたものは返さなければならない」との口癖からだ。プレカット材料を使えば、規矩術がなくても住宅は建
てられるが「何千万円も預かる仕事。後進にも資格や技能を持ってほしい」という。
言葉の問題などから敷居の高い国際大会に出場するための方法も後進に伝えている。「国際大会でメダルが取れれば業界の力になり、国の力になる」と信念を語る。
休みは年間に2日あるかないか。趣味だった絵画も20年も描いていない。「かみさんはどこにも連れていけず気の毒だった」と妻、正子さん(60)を思いやり、今回の受章について、「『褒章は奥さんがもらったんだ』と
いわれるんですよ」と笑顔を見せた。(高橋裕子)