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ID :  9252
公開日 :  2008年 10月31日
タイトル
[鎌倉の建長寺華厳塔 諏訪の宮大工“復元”
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新聞名
長野日報
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元URL.
http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=12374
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写真:
 
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諏訪市四賀桑原の宮大工、北原佐吉さん(77)と次男の英樹さん(41)が、数年がかりで製作している建長寺華厳(けごん)塔の10分の1小塔がほぼ完成した。細部まで復元した禅宗唐様(からよう)の小塔は 台座を含めた高さが3メートルを超える五重塔。模型とはいえ、建立と同じだけの手間をかけている労作だ。製作を依頼した臨済宗建長寺派吉田正道管長も寺への搬入を心待ちにしている。
 鎌倉市の建長寺は鎌倉五山第1の古刹(こさつ)。同寺によると、華厳塔は1253年の創建時には建立されていたが、火災で3度焼失。江戸時代の火災以降再建はなく、現在は礎石のみが塔の存在を伝えている。
 小塔製作のきっかけは7年ほど前。鎌倉市内にある建長寺派の海蔵(かいぞう)寺で、唐様の岩船地蔵堂の復元に携わっていた北原さん親子の仕事の様子を見た吉田管長が、華厳塔復興の願いを打ち明け、10分の1 模型の製作を持ち掛けた。まもなく佐吉さんが同寺の唐様建築などを参考に図面を起こし、英樹さんが製作を始めた。
 小塔は本体が組み上がり、高欄(こうらん)や扉などの取り付けを残すのみとなった。裳階(もこし)付きの五重塔は素木(しらき)の総ヒノキ造り。尾垂木(おだるき)や粽(ちまき)付きの柱、組み物などに唐様の特徴が表 れている。
 材料1点1点が手作りで、屋根を支える斗(ます)の数は2000個以上にもなるという。佐吉さんは「無駄な材は1個もない。みんな役目を背負っている。そうでないと屋根がもたない」と説明する。「7、800年前の鎌倉 時代の唐様の建築なら、おそらくこうだろうと想像しながら造っている」という英樹さんは、「塔が宮大工では一番の仕事」と胸を張った。
 10月30日、吉田管長が同派の宗務総長らとともに作業場を訪れた。5月に来訪したときに完成していたのは4層目までで、今回五層まで棟が上がったと聞いて、早速駆け付けた。吉田管長は唐様に美しく仕上がってい る小塔を確認すると「諏訪にはこういう宮大工さんの伝統が残っている。いい棟梁(とうりょう)に巡り合った」と満足そうに話した。
 小塔は来春には建長寺に収められる。同寺では塔内に本尊(大日如来)を安置して開眼供養を行い、法堂(はっとう)に据えて一般公開する。吉田管長は「華厳塔を復興したいというのが念願だ。鎌倉には建物に対する 制限があって難しいが、模型を飾って、多くの皆さんに見ていただき、復興させようという声を上げてもらえるようにしたい」と話している。