ID :
8971
公開日 :
2008年 10月 6日
タイトル
[指物師・鈴木保さん 衰えぬ制作意欲
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新聞名
MSN産経ニュース
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/ibaraki/081006/ibr0810060255002-n1.htm
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写真:
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茨城県大子町の自宅に併設する作業場。表面がざらざらのケヤキの板材にカンナをあてる。スルスルと“薄皮”が出てきた。鮮やかな手さばき。電動器具を使って表面を削る職人も多くなってきているなか、
今でも手作業にこだわっている。指物(さしもの)師-。金釘を使わずに木の板を組み合わせ、タンスや小物入れ、テーブルなどの木工品を生み出す職人だ。
指物師だった義父。幼少のころから自宅の作業場で職人の所作を目の当たりにしていた。中学時代には木工の自動車を作り、県の作品展に出品したところ“優勝”をさらった。「そのころから木工業という仕事の素養があ
ったのかもしれませんね、ハハハ」と笑う。
新制中学を卒業した昭和23年。実家を離れ、日立市内で修行に入った。しばらくしてから仏壇作りを命じられた。そしてできあがった仏壇を親方のもとへ持っていくと、「海へかっぽれ(投げろ)!」。兄弟子よりも早く、し
かも優れた製品を作ってしまう。「兄弟子の顔を立てろ、ということだったんでしょう」
昭和29年に大子町に戻り、木工業を「鈴金家具店」を営んで54年。使用する木材の特性や乾燥状態、木の持つ個性などにも熟知している。細心の注意を払いながら丁寧な制作を続け、顧客の信頼も厚い。
それでも、自分で満足のいくものはなかなかできないという。「お客さんは『すばらしい』と言ってくれるけど、あそこをこうすればよかった、ということはしょっちゅう」と、ベテラン職人でも頭をかく。
大子町では古くから高品質の漆が生産されていた。しかし、代替塗料の出現や樹液の掻き子の減少もあって漆塗りの技術も途絶えつつあった。10年ほど前にその技術の復元にも尽力。地元の木材と漆を使用し、地産
地消にも貢献している。
こうしたことが認められ、国土緑化推進機構が「もりのくに・にっぽん運動」の一環として選定している「森の名手・名人」に今年度、選ばれた。森に関わる他の模範となる達人。75歳と年を重ねたが、制作意欲は衰えるこ
とを知らない。(