ID
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7751
公開日 :
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2008年 5月25日
タイトル
[宮崎モデルで全国に発信を
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新聞名
宮崎日日新聞
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元URL.
http://www.the-miyanichi.co.jp/contents/?itemid=8165&blogid=5&catid=15
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元urltop:
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写真:
木材業界の記事です
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宮崎モデルで全国に発信を
2005年9月、台風14号による五ケ瀬川の濁流は、日之影町など川沿いの町を襲った。川に流れ落ちた木々や岩石などが濁流にすさまじいエネルギーを与え、高千穂線の二つの鉄橋を破壊した。
昨年8月の台風5号では、延岡市の海岸に大量の流木が漂着した。林業者は山の崩落が水害を大きくしたことに心を痛めていた。
防災のためにも山を守るためにも、環境に配慮した伐採のルールをつくろうと林業者の一部が自ら動き始めた。画期的なことだ。
若手の木材生産者らでつくる特定非営利活動法人(NPO法人)の「ひむか維森の会」(松岡明彦代表理事)は、木材の伐採・搬出のためのガイドライン(指針)を今月制定した。宮崎大農学部の教授とも話し合い、環境に
配
慮したルールを盛り込んだ。
■真の意味で日本一に■
例えば(1)切り出した木材を集める場所や作業道は谷川から離れた場所に(2)重要な植物群落、野生生物に配慮(3)残土は谷川に流出しないように地盤の安定した場所に置く―など伐採・搬出に伴う工事や後始末の方法
まで指示している。
そのほか「地域住民の水源を汚さない」「谷川、尾根筋での伐採は慎重に検討する」などの原則を確認した上で、「十ヘクタールを超える伐採は、場所や時間の分散が可能か検討する」などと決めている。
建築不況も相まって、木材価格は低迷にあえいでいる。本県は杉素材生産量日本一を誇るが、杉丸太の平均額は一立方メートル9千円ほど。ピーク時の昭和50年代の三分の一だ。厳しい経営の中でルールを設定する
ことに会員からは「コストが高くなり、(業者間の)競争に負けるのではないか」という声も上がったという。
だが、松岡会長は「このままでは山は崩壊していくとの危機感がある。環境に配慮したルールを守ることは基本中の基本。そうしてこそ『杉を使ってほしい』と消費者に言える。本当の意味で日本一の杉生産地になりた
い」と語る。
今後は学識者、専門家らで認証委員会をつくり、指針を守って木を切っている業者には認証を与える制度も計画している。
■県産杉は貴重な資源■
県内の杉は多くが伐期を迎えつつある。貴重なそして豊富な資源だ。これまでは外材の攻勢で苦境が続いた。だが最近、中国の木材需要増や米国が木材輸出を制限し始めるなど、国産材にかすかに追い風が吹き始め
ている。
ひむか維森の会のように木材生産者自らが環境を重視した指針を制定するのは全国でも異例という。全国に発信できる宮崎モデルとして、ぜひ認証化を実現してほしい。県も植栽未済地対策の一つとして期待してい
る。
指針を守って伐採された木材には付加価値が付くなど、参加業者が増えるような取り組みも必要となってくるだろう。
近年、台風・豪雨は凶暴化している。“川上”の林業関係者、山林保有者、行政などが連携して山の保全に取り組まないと、“川下”の下流域の水害を防ぐことはできない。木を切るルールの確立は、そのための大切な一
歩だ。