(陸前高田支局・太田代剛)
両協同組合の経営危機の原因には、仕入れ先の言い値通りの原料仕入れや製品販売など、経営努力が感じられない前経営陣の姿勢のほか、ともに木工団地を形成し、本来緊密に連携すべき「けせんプレカット事業 協同組合」(佐藤実理事長)との団地内対立などが挙げられている。
昨年10月、経営危機が表面化し、町は2回目の融資(3億円)を実行。中川支配人ら新経営陣は▽給与削減など人件費抑制(年間効果額7230万円)▽原材料と品質の管理徹底(同4400万円)▽バイオマスエネル ギー活用による燃料費削減(同2520万円)-など、年間約2億円の収支改善を目指す再建計画に取り組んできた。
しかし、予想以上の信用力低下などで運転資金は枯渇。住宅着工数減少などの影響で売り上げも落ち込み、3カ月足らずで再び経営危機に陥った。
19日の町民説明会では「こんなことを続けたら、町財政はどうなるのか」と、短期間で多額の追加融資を実行した町の責任を問う声が相次いだ。一部町議は「約7億円の赤字に対し、前回融資の3億円はそもそも少 な過ぎた」と指摘する。
そこで、今回は当面の手形決済などに必要な資金約2億7000万円のほか、現金払いで有利な仕入れを行うための資金約1億円を加えて融資する形をとった。町は08年度着手を計画していた役場新庁舎建設を 凍結し、両協同組合の破たんを回避した。
県は基本的に町の方針を支持する構えで、大船渡地方振興局の漆原隆一林務課長は「経営状況を十分把握し、必要な支援体制をつくりたい」と語る。
しかし、状況は甘くない。住宅着工数の低迷など業界全体の先行きが不透明なほか、木工団地のビジネスモデルは、時代の流れとともに現状とずれが生じ始めている。
木工団地は1993年から2002年にかけ、特産の気仙スギを団地内で一貫加工し、低コストで高付加価値販売することを目指して整備された。
しかし近年、住宅メーカーのニーズはスギより強度の高いカラマツに移行。両協同組合も北海道から輸送コストをかけてカラマツを仕入れるなど、本来の「強み」を生かし切れなくなっている。
中川支配人は「状況の厳しさは十分理解しているが、この木工団地には町民の誇りと日本林業の未来がかかっている。全力で再建を成し遂げたい」と決意を語る。