改正建築基準法は今年6月20日に施行。大きな社会問題になった耐震強度偽装問題をきっかけに着工前の建築確認審査が厳格化され、高度な構造計算が行われた場合は行政のほかに第三者機関による二重チェ ックが義務づけられた。
建築士が県や市役所に提出する確認書類は約1・5倍に増えた上、高さ20メートル以上のマンションなどの場合、確認に要する日数は従来の21日間から最高で70日間まで延長された。
県建築士会の中居敬一副会長は「法律の改正で書類の作成が大変になった。不備があった場合は一からやり直さなければならず、その間はほかの仕事が中断される。時間的、経済的ロスだ」と困り顔だ。
盛岡市の建設会社の管理担当者は「県内では確認審査する第三者機関が少なく、そこに集中している状況だ。確認が下りなければ着工もできない。資材業者などにも影響を及ぼしており、県内経済にも波及するだ ろう」と話す。
一方、改正の影響は伝統工法を守る気仙大工にも出ている。気仙大工建築研究事業協同組合の熊谷進理事長=陸前高田市竹駒町=は「構造計算にかかる費用も時間も手間も非常に大きく、事実上信念を曲げて金 物を使わざるを得なくなっている。国は、日本の伝統建築をどう守っていくのか真剣に考えてほしい」と切実に望む。
県は26日、建築確認円滑化対策連絡会議の初会合を開き、確認申請の書類作成の際にアドバイスを行う窓口設置などを決めた。
県建築住宅課の鈴木徹総括課長は「建築業界はすそ野が広く、県内経済に与える影響も大きい。一刻も早く建築確認が円滑にいくようにすることが行政としての役割。情報提供など、必要な対策を講じていきたい」 としている。