ID :
5850
公開日 :
2007年 12月25日
タイトル
[仙台のケヤキは残った
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新聞名
MSN産経ニュース
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/region/tohoku/miyagi/071225/myg0712250152000-n1.htm
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写真:
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JR仙台駅西口を出ると目に飛び込んでくる仙台市・青葉通のケヤキ街路樹。杜の都のシンボルとなっているが、今年は市営地下鉄東西線工事で影響を受けるケヤキをめぐり移植か伐採かで紆余(うよ)曲折
があった。結局、市は市民アンケートで多数意見だった一部移植のほかは伐採することに決めた。市が移植するケヤキ、伐採予定のうち移植希望者に譲渡されるケヤキは、ほかの地に根を下ろし生きていく。一方、伐採
する木は有効活用の道で生かされることになった。(石崎慶一)
仙台の夜はこの時期、黄金色に輝く。ケヤキを数十万個の電球で飾る「光のページェント」が大みそかまで続く。
今年のページェントは昨年より点灯区間が短縮され、電球の数も10万個減った。例年、仙台市青葉区の2つの通りで実施するが、仙台駅前から西に延びる青葉通では、地下鉄が通る予定の一部区間で、ケヤキに電飾
が施されなかった。地下鉄工事に伴い、1月に撤去作業が始まるためだった。
この区間に並ぶケヤキのうち44本が撤去の対象となる。当初は50本の予定で、市はすべて移植の方針だったが、議会で約1億6130万円の移植経費が論議され、ケヤキについての市民アンケートで「基本的には伐
採し、数本を記念に移植する」という声が多かったことなどから方針を転換。7本を近くの公園に移植し、残り37本を伐採。伐採予定の木は移植希望者には譲渡する意向を8月に打ち出した。
これを受け、「1本でも多く移植したい」と地元の町内会、商店街振興組合、東北大が「青葉山新キャンパスにケヤキ移植を進める実行委員会」を10月に設立し、希望者に名乗りを上げた。現在、企業や個人から移植費
用の協賛金を募る活動を続けている。
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先の戦争で仙台は空襲にあい、焼け野原となった。戦前の緑豊かな仙台を取り戻そうと、昭和25年に青葉通にケヤキが植樹された。
「小学校のころにケヤキが植えられ、木とともに大きくなった。戦後、仙台の復興を見守ってきたケヤキを健やかに生き続けさせたい一心で取り組んでいる」。
実行委の上村甚一会長(66)はこうケヤキへの思いを語る。
地下鉄工事完了後は、ある程度成長したケヤキが植樹される予定だが、長年、いまのケヤキに親しんできた地元住民にとって伐採はしのびなかったという。
「夏は葉が茂って日差しを遮り、冬は葉が落ちて暖かい日差しをもたらすケヤキに地元では感謝している」と上村会長。
1本の移植費用は約 280万円。実行委では10本の移植を目標に活動している。当初は思うように協賛金が集まらなかったが、趣旨が浸透するにつれ、企業や個人からの申し出が増えてきた。今月上旬までに7本分の
約1900万円の協賛金が集まっており、引き続き協力を呼びかけていくという。
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こうした活動に、もともとはすべて移植の方針だった仙台市の梅原克彦市長は「杜の都・仙台の精神がいまなお息づいていることを頼もしく思う。目標に向けがんばってほしい」とエールを送った。
実行委のほか、仙台市などの電気店の団体から1本の譲渡の申し込みがあり、隣の区の公園広場への移植が決まった。
伐採されるケヤキについて、市は検討会議を設置し、利活用を探っている。先の市民アンケートでは「公共の場で利用」と「売却」が多数意見で拮抗(きっこう)。利用の場合には「ベンチ」が最多、次いで「家具・建具」だ
った。こうした声を踏まえ、市は「年明けの会議で方向性を検討する」としている。どの方途を選択するにせよ、有効活用してこそケヤキへの感謝と愛情の表現となるだろう。
今月中には移植、伐採本数が確定する見込みで、来月下旬には伐採が先に始まる。
実行委では今月28日まで協賛金を募る。(電)022・227・4851。
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≪青葉通のケヤキをめぐる動き≫
1月 仙台市が市営地下鉄東西線工事で影響を受けるヤキ50本を移植すると発表。
2月 仙台市がケヤキ移植経費約1億6130万円を盛り込んだ予算案を市議会に提出。
3月 仙台市議会でケヤキ移植をめぐり議論。「市民の意見を考慮し方針を再検討することを求める」付帯意見を付けて予算案を可決。
4月 仙台市がケヤキの取り扱いについて市民1万人にアンケートを実施すると発表。
6月 仙台市がアンケート結果公表。5割超が伐採容認。
8月 仙台市がケヤキについて新方針を発表。影響を受ける木を44本に変更し、7本を移植、37本を伐採。伐採予定の木は移植希望者に譲渡する。ケヤキ関連予算を4680万円に減額。
10月 2団体が計11本の譲渡を仙台市に申し込み。