ID :
606
公開日 :
2006年 3月22日
タイトル
[木の価値に対する消費者意識はまだ低い
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新聞名
沖縄タイムス
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元URL.
http://www.okinawatimes.co.jp/col/20060323m.html
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元urltop:
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写真:
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東京の住宅街を走る世田谷線。路線距離わずか五キロ、二両編成の小ぶりな軌道ではあるが、これがなかなか味わい深い。
平均時速は二十キロに満たず、車窓から見える自転車が、視界をさえぎられるまで並走する。車掌の安全点検の声が車内に響き、交差する道路で信号を待つ。時間に追われ、先を急ぐ日々の生活で、ゆったりとした
時間の流れ、手作り感が何とも心地良い。
過日、幕末の教育者・吉田松陰に由来する松蔭神社前で下車し、ある民家に足を向けた。築百五十年の伝統的な日本家屋。広々とした庭に木々が生い茂り、都会の風景に一枚の古い写真をはめ込んだような錯覚に陥
る。
屋内には屋宜政廣さん(50)が丹精込めたアカギの木工作品が並べてある。県産素材にこだわり十九年。テーブルやベンチ、自然の形を生かしたどれも個性的な家具だ。日本家屋にも違和感はない。
沖縄市知花の工房は「島変木(とうへんぼく)」。偏屈な人を表す意に「島」をかけたところが、職人らしい。ただ、当人はいたって普通の人。「工業製品は完成した瞬間から劣化が始まるが、木は年が加わるごとに味が出
る」。
県内では若い木工家も出てきたが、木の価値に対する消費者意識はまだ低いという。本土では作れない県産の良さを知ってほしい。「人は何かに感動すると、次は触りたくなる。そんな作品を作り続けたい」。触れたテ
ーブルからぬくもりが伝わってきた。(