ID :
5306
公開日 :
2007年 11月 9日
タイトル
[住宅着工激減
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新聞名
沖縄タイムス
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元URL.
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071106.html
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元urltop:
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写真:
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県内の新設住宅着工戸数が激減している。改正建築基準法の影響とはいえ、このままでは県内の景気動向に大きな影響を及ぼす可能性がある。
着工戸数は七月が六百八十一戸(対前年同月比61%減)、八月は六百八戸(同64・6%減)、九月五百七十五戸(同61%減)だ。七月の建築確認申請数は十六件、前年より97%も減っていた。
住宅は一生の買い物だ。耐震構造などの計算に間違いがあってはならず、その意味で図面や計算書の確認を厳しくする意義は理解できる。
だが、少し立ち止まって考えてみたい。そもそも建築業界を混乱させたのは、業界の理解を得ずに建築基準法の改正を急いだからではなかったか。
なのに、設計事務や審査で必要な新しい構造計算関連基準が示されたのは六月二十日の改正法施行の一カ月前だ。構造計算などを示す「建築物の構造関係技術基準解説書」の発行は、さらに遅れて八月十日である。
この間、設計士は解説書が使えず、審査機関も改正法を十分に理解できなかったという。国が示した建築確認手続きに不備があったというしかない。
改正法では二階建て以上で、延べ床面積が十平方メートル以上なら建築確認が必要になる。県内の場合、ほとんどの住宅が審査対象といっていい。
建築確認では、建物の意匠や構造に関する図面と計算書を提出するが、申請後は、設計図書の差し替えや訂正による補正が認められなくなった。
却下を恐れて、建築士が申請に慎重になるのは当然だろう。
法整備を急ぐ一方で業界への対応が遅れた結果、住宅着工の激減につながったと言わざるを得ない。
国交省は今月中旬にも同法の施行規則を改正し、手続きを明確化する方針を示している。しかし、対策が後手に回った感は否めない。
第一生命経済研究所の新家義貴主任エコノミストは住宅着工の減少が七―九月期と十―十二月期のGDPをそれぞれ1%程度押し下げると試算。「混乱が続けば影響は来年以降も続く可能性がある」と警告している。
県建設業界は公共事業の削減に伴い、ホテルや民間住宅建設の受注に力を入れてきた。建築審査の厳格化はそれに水を差した格好になる。
緩やかに上向いているとはいえ、県経済への負の影響を無視するわけにはいくまい。
施行規則の改正に合わせた耐震性や防火・避難性能を低下させない設計変更の具体的事例をどう明確化していくか。その上で都道府県への通知を急ぎ、業界の正常化を図ってもらいたい。