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ID :  4840
公開日 :  2007年 9月29日
タイトル
[フランス古道具雑記帳 s: 木片の愉しみ
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新聞名
K & CLASSIQUE
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元URL.
http://k-classiques.typepad.jp/blog/2007/09/post_6f1a.html
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元urltop:
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写真:
 
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木片と呼んでいる木製の破片は、装飾品や家具や館などから朽ち落ちた物で、古物の中でもこれほど用途の無い物は珍しいと言えましょう。器やガラスなどとは違い、見る人によっては単なる用の無いただ の破片である訳で、しかしこのオブジェ嗜好を刺激する木片こそ古物の面白さの究極のひとつであるように思えます。イメージの派生を容赦なく強いてくるこれらの木片は、イマジネーションに密着したコンデンスやエッ センスのような物であり、こういうところに実は「美」が隠れ棲んでいるのであります。世の中が便利になればなるほど、経済が豊かになればなるほど、人は無益なものを希求するのはローマ時代の昔からの宿命とも言え 、つまり崇高なる遊びは常に無益であるからこそクリスタルの如く純粋なのであります。
シュールレアリズムの父と呼べるような19世紀の詩人ロートレアモン伯爵が書き記した「解剖台の上でのミシンとコーモリ傘の偶然の出会いのように美しい!」というフレーズは、そのまま古物との予期せぬ突然の出会い を言い当てていると同時に、イメージの飛躍と派生を刺激する古物の有り方自体にも当てはまるように思えます。そして木片は、過ぎ去った時という大海の中を長く漂流して今に辿り着いた流木のひとつであり、枯れた美 しさを無言に秘めた古物なのであります。