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木造建築のネツト記事
ID :  4554
公開日 :  2007年 8月25日
タイトル
[町の工務店ネットが出した『貸し本』
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.news.janjan.jp/living/0708/0708241259/1.php
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元urltop:
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写真:
 
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この書籍を発行した「町の工務店ネット」は、グループのコンセプト「住まいは、いのちの箱である」を明確にするために、まず初めにこの本を発行したのだそうです(07年7月25日発行)。
発行:町の工務店ネット巻頭にこんな一文があります。
(引用開始) 「 ……  この本は町の工務店ネットから、貸し本で貸し出されます。本の貸し出し期間は、一家族8ヶ月間とします。(中略)  家はハードです。住まいはソフトです。この二つに橋を架けて、自分たちの家・住まいは、どんなふうにありたいのか、  この本を間にはさみ、家族で話し合っているうちにみえてきたら、それが、この本の本望とするところです。…… 」 (引用終り)  貸し出し期間8ヶ月というだけあって、ハードカバー351頁の丈夫そうな装丁です。かなりオモイです。
 巻末には、編集委員41人、協力者14人の名が記されています。約30人の工務店関係者、10人ほどの建築家、それに医師、森林資源の研究者や建築構造学の研究者と多士済々の顔ぶれです。議論しながらまとめたこ とがうかがえます。この本が、「自社の工法だけが優れている」といいつのる“我田引水本”とは一線を画していることがわかります。
 巷にあふれる住宅関係の書籍には、専門家が読めば明らかに近視眼的、独りよがりのものも少なくありません。そういう“トンデモ本”が結構売れている(らしい)という嘆かわしい状況もあります。
 この本が、貸し本の形式を取っているところには、慎重な戦略とともに、“トンデモ本”への痛烈なアンチテーゼも(勝手に)感じてしまいます。
   さて、本文は、prologue「大きな自然」から始まります。詩などを引用し写真やイラストを使って、地球規模の自然を俯瞰します。
 第1章「予防医学の系譜」では、ヒポクラテス「空気・水・場所について」や、レイチェル・カーソン「沈黙の春」などから引用し、「治すための医療から、予防医学の時代に入っている」と説きます。
からだの健康  第2章「からだの健康」では、増え続けて今や2万を越えた病名の数と生活習慣病などにふれています。『家庭の医学本』とみまがうような解剖図まで登場します。住まいをつくるには、予防医学的な観点が重要だという 考え方には強く同意します。
 筆者のHPの一つに次のように書いているからです。「“欠陥住宅”という病気を直すにはクスリが必要です。しかし、症状がでてから使う治療薬は、場合によって劇薬が必要です。それよりも、日頃から薬の要らない“健 康な生活”を保って、楽しい住まいづくりをしませんか。“健康な生活”とは、けっして建築の技術に詳しくなることではなくて、ごくあたりまえの“消費者感覚”を持つことなのです」。我田引水をお赦しください。
 筆者にとって心あたりのある部分はゆっくり読むことにして、先に進みました。
 次に第3章では、「住まいの健康と安全」です。酸性雨、黄砂、ダイオキシン、光化学スモッグ、そしてシックハウスに関係する室内空気質の問題や、電磁波などについての記述です。
北極圏とサバンナ  第4章「自然力の家」には、「現代人は、縄文時代の竪穴住居に住めるだろうか?」、「温帯に住む人は、イグルーに住めるか?」、「エネルギー自給自足の時代へ」、「地震なのに揺れない家」など、自然エネルギーに関 する話題です。
 第5章「住まいを予防医学する」は、さまざまな設計の知恵(実例)を通して「気持ちがよくなる設計」を紹介します。「健康のための26の法則」と題されたページは、詩的な文章とイラストレーションにより絵本のようで す。
 第6章は、「町がイキイキしていることも予防医学」です。一つひとつの住まいは、イキイキとした町があってこそ、と個別の住まいから視点を少しだけ望遠にひいています。
 第7章は「建築素材を選ぶ」。視点を戻し近接します。「出発点は、建築材料を選ばなければ、家は建てられない、という事実。」から始まり、建築家による建築材料の選び方が述べられています。
 第8章「小さな家だけど、大きく住める家」では、約30頁に渡って気持ちのいい住宅の実例が紹介されます。
 【健康のための本のようでもあり、自然の書のようでもあり、絵本のようでもあり、結局いろんなことをふまえた上で、設計を考えることこそが大切】という本と理解しました。
 「住まい」をいきなりハードからではなく、もっとも大切なソフト面を考えることから始めようと説いています。しかし、押し付けがましさは感じられません。こんなことも考えておいた方がいいですよ、というスタンスです。
 子どもと一緒に読みながら住まいを考えようという工夫も感じられます。わが国に欠けていると言われている、小中学生への「住まい教育」にも役立ちそうです。
 派手な宣伝に惹かれた多くの人達が、先ず初めに住宅展示場を訪れて、いきなりハードの話しから住まいづくりに入っていくという現実があります。そこで、飽き足らなさに気づいた少数の人と、初めから建築家に頼むこ とを目指している少数の人とを合わせた、一説によると数%のクライアント(注文主、建て主)だけが建築家に依頼しています。筆者は数%でなく、数千ppmのオーダーではないかと思っていますが(笑)。
 とはいえ2001年に調べたところ、住宅の施工では、工務店はシェアを推定60%以上もっていました。意外に思われるかもしれませんが、ハウスメーカーの物量宣伝に惑わされているようです。とはいえ、ハウスメーカ ー、工務店に限らず、品質を確保できない(いわゆる欠陥)会社も存在していることは事実です。その一因には、建築主の意識にもあります。建築相談を受けると実感します。