ID 1520
登録日
2006年 8月21日
タイトル
本丸御殿復元へ斧入れ行事 長野の上松で
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新聞名
中日新聞
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元URL.
http://www.chunichi.co.jp/00/ach/20060823/lcl_____ach_____001.shtml
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元urltop:
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写真:
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名古屋市が2008年度の着工を目指す名古屋城本丸御殿復元への動きが、いよいよ本格化してきた。尾張藩が御用林としていた長野県上松町で22日行われた、木曽ヒノキを切り出す「斧(おの)入れ行事」。
市民らも大勢駆け付け、神聖な儀式に見入った。地元町民との交流会も催され、御殿に使うヒノキを通じた触れ合いの輪も広がった。
午前11時半ごろ、手入れの行き届いた上松町内の小川入国有林。「カーン、カーン」。地元上松町などの杣(そま=きこり)が振り下ろす斧が木の幹にあたるたび、透明感のある音が静寂な森に響き渡った。
険しい斜面に根を張っているのは、樹齢約300年、高さ約30メートル、直径約60センチの天然ヒノキ。幹の三方から斧を入れ三本足にした上で、目指す方向に確実に倒す。「三ツ紐伐(みつひもぎ)り」と呼ばれる技で
、1000年以上前から伝わる。
木立を渡る風に乗り、ヒノキの香りが辺りを包む。遠巻きに作業を見つめる市民ら約170人は黙ったまま、斧が木にあたる音を聞いていた。
1時間近くが過ぎたころ、ヒノキの内部に空洞ができた。もう倒れる寸前だ。杣が叫んだ。「寝るぞー」。杣にとって、木は「切り倒す」のではなく「寝かす」。木が傷まないよう、“寝床”にも障害物がないか注意を払う。そこ
には自然への畏怖(いふ)が込められているのだという。
杣が最後の斧を入れると、ヒノキは「キーン」と“泣き”ながら、斜面に倒れた。その瞬間、静まり返っていた市民らからは「オーッ」というどよめきと拍手が起こった。昭和区から来ていた千賀可多子さん(53)は「木の泣く
声を初めて聞いた。ヒノキが生きてきた300年の命の重みを感じた」と、感激を隠せない様子で話した。
その後、切り株に伐採したヒノキのこずえを差して行われた株祭り。松原武久市長の「礼」という掛け声で全員が頭を垂れ、木の再生を祈った。
市民らは現場を離れるまで切り株に触ったり、木くずを手に取って香りを楽しんだりしていた。松原市長は切り株を見ながら「急峻(きゅうしゅん)な斜面で苦労して育ってきた木なんだろう。命をつないでいきたい」と話し
た。
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