ID 1423
登録日
2006年 8月 2日
タイトル
500年杉を1億円で保全 旧徳山村のシンボル
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新聞名
中日新聞
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元URL.
http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20060803/mng_____sya_____005.shtml
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元urltop:
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写真:
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名木は残った-。徳山ダム(岐阜県揖斐川町)の水没線にそびえる杉の名木を守ろうと、ダム建設主体の水資源機構が防水や土砂崩落防止の工事を進めている。樹齢約500年。廃村になった徳山村のシンボ
ルだった。約100年前にも伐採の危機があったが、1人の老人が「杉の命を買う」と大枚をはたいた逸話を秘める。延命を願った老人の志、村民の望みは守られた。
杉は南北朝時代の山城「徳山城」城跡の尾根にそびえ「しろびや杉」の名で親しまれている。周囲の雑木を見下ろす樹高約40メートルの巨木だ。
100年ほど前の明治後期、村民負担で道普請をした際、伐採して売却しようという話が持ち上がった。その時、根尾惣十郎という老人が「売却代金と同じ金を出す」と申し出て、杉は命拾いした。
正確な金額は分からないが、巨木だけにかなりの高額だったという。惣十郎老人は特に豊かだったわけではないが「杉の命を買った。この杉が枯れ果てるまでこのままにしておいてほしい」と訴えた。証拠の書き付けは
近年まで代々の区長に伝えられ、村民は杉に手を付けようとはしなかった。
徳山の廃村時「何としても立ち枯れさせたくない」と、村は杉の保全を旧水資源開発公団(現水資源機構)に要望した。水没しないとはいえ、ほっておくと湖水が根を浸して腐らせたり、がけ崩れが木を傷めて倒したりす
る恐れがあるためだ。要望は受け入れられ、公共の建物などを補償するため公団と村が結んだ協定に「一本杉の崩落防止に関する工事」の項目が盛られた。水資源機構は約1億1500万円をかけ、根の部分をコンクリ
ートで固めたり、周囲に石を積み上げたりする工事を進めている。今月末には完成する見込み。国道417号の付け替え道路脇から全長約500メートルの道路も整備する。
元村教育長の村瀬惣市さん(88)=岐阜県本巣市文殊=は「先人が身銭を切って守った地元のシンボルが残った」と喜んでいる。
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