ID 14633
登録日
2010年 1月 9日
タイトル
『滋賀の巨木めぐり』を読んで
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.janjannews.jp/archives/2162038.html
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元urltop:
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写真:
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本書は、「シリーズ近江文庫」の一冊である。滋賀県レイカディア大学という高齢者の社会参加のための「大学」の園芸学科に通う「学生」が、巨木と巡り会い「滋賀の名木を訪ねる会」を立ち上げたことから生ま
れた。例会で見た巨木の一部を他の人々にも紹介しようと108本を選び、樹高、幹周り、謂(いわ)れなどを調べ、写真とともにまとめ上げた。樹種によっては、樹木名の由来や材の質についても説明している。
大勢の会員が分担執筆しているため、内容が多岐にわたり、1本1本の巨木への各執筆者の深い思いが伝わってくる。しかも樹木やその場所に対する説明にとどまらず、民俗学的・歴史的な意味も研究して書いている
ため、単なる観光ガイドブックや植物図鑑とはひと味違った面白さがあり、読者も巨木の虜になるだろう。
「滋賀県は面積・人口など統計的に全国の約1パーセントを占めているが、巨木の比率は約2.16パーセントと少し高くなっている」という。内陸部に位置するため災害が少ないせいではないかとのこと。この巨木が残
っている場所の7割が神社・寺院とのことだ。
神社仏閣に巨木が多いのはおそらく他府県でも同じだろう。人間とのかかわりの中で、御神木として大切に守られてきたものが巨樹・巨木として残り現在に至っている。自然神信仰の中での神の「依代(よりしろ)」として
、樹木はなくてはならないものであり、樹木の中でもひときわ立派な風格と威厳を備えた木が依代に選ばれた。
この書に選ばれた巨木は歴史の生き証人として織田信長や豊臣秀吉ら戦国武将や近江商人の生き様を見守りつつ現在に至っているわけだが、これからもまだ生き続けて温暖化していく地球の行く末を見守ってほしいと
願わずにはいられない。
しかし、枯死寸前の巨木もあるとのこと。著者もあとがきで書いているように「巨木の今ある姿を次世代に継承していく」ためには保護保全活動は欠かせない。
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