ID 14608
登録日
2010年 1月 3日
タイトル
未来へつなぐ:自然産業の継承者たち/2 1本の木の重み伝えた
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/mie/news/20100104ddlk24020192000c.html
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元urltop:
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写真:
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利益優先にはできない仕事
いなべ市北勢町二之瀬の山の中。「伐採だけが林業ではない。切った場所に植林して、環境のことを考えることが仕事なんだ」。山道を歩きながら、佐藤誠さん(31)=同市北勢町阿下喜=は語った。
間伐が行われている場所に到着した。「ブーン」というエンジン音がそこら中から響いている。でも人は見えない。「下を見てごらん」と佐藤さんが指さした。その先には、がけのような急斜面。木の間から電動ノコギリを
持った男性が顔を出した。佐藤さんは「ここはまだ安全な方だよ」と笑う。
佐藤さんは、父誠治さん(62)が営む「佐藤林業」で働いている。仕事は、国有林の間伐事業が中心だ。高校を卒業して以来、この道一筋。多くの現場を経験し、いまは14人の働き手を監督する。大きな体に髪を短く刈り
上げた姿には「ベテラン」の文字が似合う。
何代も林業をしてきた家の長男として生まれた。小学生のころ、何度も父に手を引かれて山へ入り、「おまえも大きくなったらこうするんだよ」と言われて育った。高校生の時、「スーツを着て街を歩いてみたい」と都会に
あこがれたこともあった。だが、親を悲しませてまでやりたいことがあるわけでもない。「敷かれたレールの上を走ってみるか」。そんな気持ちで、林業に足を踏み入れた。
仕事を始めて3年目。現場で事故が立て続けに起きた。不安になった。真剣に別の道を模索した。しかし、ほかの職業と比べれば比べるほど林業の可能性に気付かされた。1本の木を切るか残すかで、山の環境は変わ
る。責任は重いが、自分の判断で森を守れる。「林業を突き詰めると、環境問題について考えざるを得なくなる」。利益最優先ではできないこの仕事が好きだと気付いた。以来、二度と林業から離れようと思わなくなった
。
ある日、知人の庭の木の枝を切っていると、通りかかった小学生たちが「自然を破壊するな」と叫んだ。からかっただけだろうが、佐藤さんは「木を切ることは環境破壊」という固定観念が子どもたちに植え付けられてい
ることにショックを受けた。
「林業について正しい知識を持つことは、環境問題を理解することにつながるはずだ。地元の仕事を積極的にして、子どもたちに林業を見せてあげたい」。かつて自分が無意識のうちに学んだ「1本の木の重み」を若い
世代にきちんと伝えていくのが、佐藤さんの使命だ。
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