ID 14336
登録日
2009年 12月 9日
タイトル
挿し木で増殖 住友林業成功
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kanagawa/news/20091210-OYT8T00083.htm
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元urltop:
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写真:
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樹齢350年鎌倉・安国論寺のサザンカ
樹齢350年のサザンカの前で、増殖した苗を見る玉川住職(右)と中村主任研究員
住友林業(東京都千代田区)は9日、鎌倉市大町の安国論寺にあるサザンカの巨木(樹高6メートル80、根回り1メートル30)を、挿し木で増殖することに成功したと発表した。同寺のサザンカは推定樹齢350年で、同
市の天然記念物に指定されている。同社は「これほどの老木を増殖させた公式例はない」としており、来年3月に福岡県で開かれる国際ツバキ会議で成果を報告する。同寺の玉川覚祥住職は「枯死を心配していたが、貴
重な後継樹が得られた」と成功を喜んでいる。
同寺では、サザンカの樹勢の衰えが目立ち始めたことから、樹医による挿し木を試みてきた。しかし、いずれも失敗したため、昨年、古木の増殖に実績のある同社に研究を依頼した。
同社は今年6月、135本の枝を採取して、筑波研究所で育苗に取り組んだ。同社が増殖の手段として着目したのは、「天然植物脂肪酸(KODA)」と呼ばれる特殊な成長促進剤。
KODAに植物の成長を促す作用があることは、化粧品メーカーの資生堂によって1997年に発見されたが、その後、住友林業が、発根(はつこん)の促進作用もあることを突き止めた。老化で成長が止まった樹木の「休
眠状態」を解除する働きがあるためと考えられるという。
同社は、温度や湿度、日照などを管理できる「人工気象室」で、サザンカの成長に最適な条件を整えたうえで、KODAの濃度を3段階に分けて吹きかけた。その結果、約30本が発根して苗になり、7センチほどの高さ
にまで成長した。再来年には花が咲き、5年ほどで植樹が可能になる見通しという。
同寺のサザンカは、関東に多くサザンカが植えられた元禄年間(1688~1704)以前のもので、貴重な遺伝資源だという。研究のリーダーを務めた中村健太郎主任研究員は、「今回のような老化した希少樹木の増殖方
法として有力な手段。さらに方法を確立していきたい」と話した。
同寺は、日蓮が「立正安国論」を著述した場所として知られる。サザンカのほか、日蓮のつえが根付いたという伝説があるヤマザクラ(妙法桜)、推定樹齢200年のカイドウの3樹が市天然記念物に指定されている。同
寺は他の2樹の増殖も同社に依頼している。
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