ID 13931
登録日
2009年 11月 6日
タイトル
木もれびの森 雑木林で気分は万葉人
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000160911050002
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元urltop:
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写真:
写真が掲載されていました
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万葉集の歌が木々に添えられている相模原市大野台の木もれびの森・相模原中央緑地を訪ねた。
JR横浜線古淵駅から広い道路に出て「古淵中央」交差点を右へ歩き、国道16号の歩道橋を渡る。相模原南病院前から右へ相模緑道緑地を進んで森へ向かう道もあるが、「入口広場」を目指し、そのまま直進。少し先の
大野台小学校前から分かれる道を右へ進むと、森の入り口が見えてくる。
正面の掲示板に「さがしてみよう 万葉集と植物」とある。万葉人になったつもりで歩き始める。
すぐ歌を書いた高さ1メートルほどの木製の立て札を見つけた。気分を出し、抑揚をつけて読んでみる。
橡(つるばみ)の一重の衣うらも なく あるらむ児ゆゑ 恋ひ渡る かも
「つるばみ(クヌギ、ブナ科)」と記されている。クヌギに託して恋心を詠んだ歌であろうが、和歌に慣れていない者には、その場で意味を理解するのは難しい。歌人の心情、背景などは曖昧だったが、気分は古人のま
ま歩を進める。
ぽつりと何かが落ちてきた。ドングリだ。見上げるとクヌギはいっぱいの実をつけている。たびたび降ってくるドングリ。初めはドキッとしたが、慣れてしまえば楽しい。童心に帰ってドングリを拾った。そばに一首。
黄葉の散りゆくなへに 玉梓の使 ひを見れば 逢ひし日思ほゆ
立て札には「柿本人麿」の作とある。森を訪れたのは9月。本格的な紅葉には早いが、歌は秋を感じさせる。
「あっ、あそこにも」「こんどの歌は?」。立て札探しが楽しくなる。有名な歌人の作から作者不明のものまでさまざま。歌を読むことで散策が風情あるものに感じられるから不思議だ。
「つどいの森」「いこいの森」「学びの小径」「思索の森」。うっそうとした森を歩く。ぽっかりと青空がのぞく「芝生広場」のベンチで一休み。雑木林の規模の大きさに改めて驚く。
森を後にして相模緑道緑地を歩いてみる。民家の中の道を通り抜け、木もれび通りへ突き当たって緑道は終わった。大野台四丁目バス停から小田急線の相模大野駅行きで帰路に着いた。
普段は和歌などとは無縁の生活だが、五・七・五・七・七の響きは心地よい。帰宅後も万葉集の本を探し出し、意味を調べたり、歌を読んだり。万葉の時代に思いをはせた。
(文・萩原佳子)
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県内在住の女性ライターが、皆さんから寄せられたお気に入りの場所を紹介します。今回は芝崎正臣さん(相模原市)ほかの方々から推薦をいただきました。
=次回は19日付
■寄り道メモ■
◎木もれびの森 大野台、東大沼・若松、麻溝台の3地区にあり、計73ヘクタール。首都圏の平地に残る貴重な樹林地として1973年、県が「相模原近郊緑地特別保全地区」に指定した。大野台8丁目の相模原中央緑
地(6・58ヘクタール)は県有地で市が管理。森全体の55%は民有地。
◎散策コース 相模線上溝駅から相模原公園、木もれびの森、市立博物館、鹿沼公園を通り、横浜線淵野辺駅まで歩く「緑と芸術のコース」がある。約3時間、約12キロ。TEL 市観光協会(042・769・8236)。
◎宇宙航空研究開発機構(JAXA)相模原キャンパス 淵野辺駅から徒歩20分。展示室に歴代の衛星模型などが並び、屋外にロケット2基。開館は午前9時45分~午後5時半。門衛所で見学を受け付けている。年末
年始は休館。TEL 広報・普及係(042・759・8008)。
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