癒やしの中に充実感　大町の山中にツリーハウス群

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新聞名 中日新聞

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http://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20091018/CK2009101802000006.html

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大町市平の大町ダムに程近い里山。未舗装の山道をしばらく進むと、樹木の上につくられた家屋が目の前に現れた。子どものころアニメで見た「ツリーハウス」だ。林の中を見渡すとそこかしこにある。先ほど 渡った橋には「森のくらしの郷」との看板があったが、いったいどんなところなのか。現地を歩いた。
　秋晴れに恵まれた３連休。木漏れ日が降り注ぐ六角形のツリーハウスのデッキで、まきストーブで暖をとりながらくつろぐ女性２人に声をかけた。横浜市鶴見区から来たという保育士の母（５７）と会社員の長女（３０）。こ の家の持ち主だ。「毎日が時間に追われる生活。こうやってぼーっと何もしない時間が楽しい。本当にほっとする」 　９年ほど前に雑誌でここのツリーハウスを知り、キャンプ好きが高じて思い切って購入した。材料は用意してもらえるが、実際に建てるのは業者でなく本人。この母娘も家族総出で月３回通い、テントに寝泊まりしながら およそ１０カ月かけて組み立てた。
　景色がいい場所とは言えない。ツリーハウスには水道も電気もトイレもない。「秘密基地みたいな感じですね」。川の音と小鳥のさえずりだけが聞こえる中、長女は少女のような笑顔を見せた。
　森のくらしの郷は、約３００ヘクタールの広大な森林利用した自然体験活動の場。武蔵林業社（東京）が所有し、民間団体「千年の森自然学校」（朝重孝治代表）が運営を担う。キャンプ、林業体験、川遊びなどの子ども教 室や、フリースクール・大学向けの研修事業とともに展開しているのが、この会員制ツリーハウスクラブだ。
　ツリーハウスを持つには、１０年会員権とツリーハウスの部材キッド（計６０～１２８円程度）を購入し、年間２万円の地代を支払う必要がある。森のくらしの郷には現在、会員所有のツリーハウスが２５棟あるという。
　森づくりに協力することが所有の条件。「会員同士、声を掛け合って伐採作業したり。みんな森を良くしよう、健康な状態にしようと思っている」と朝重さんは話す。
　森のくらしの郷ではこの日、キノコ講座が開かれていた。親子連れらが山に入ってさまざまなキノコを集め、管理棟エリアで指導員から食用かどうかなどの説明を受けた。
　参加者の中にはツリーハウス所有者も。「こういう生活は１度すると楽しくてやめられない」と、森の中での生活を満喫している長野市の会社員青木喜三男さん（４６）は「子どもも自分なりに工夫していろんな遊びをして いる」とも。
　傍らでは、青木さんの長女裕菜さん（１１）が参加者にお茶を振る舞おうと、ここで知り合った友だちと火を起こし湯を沸かそうとしていた。「家にいるときと違って冒険しているみたい」。そう言って盛んに息を吹き込ん でいた。
　森のくらしの郷は心の癒やしと、自分の力で成し遂げる充実感をもたらす空間。ツリーハウスはその拠点になっているのだと感じた。