ID 12708
登録日 2009年 7月30日
タイトル
自然の素材は美しい イタリア芸術家ペノーネさんに聞く
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200907290228.html
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元urltop:
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写真:
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イタリアの「アルテ・ポーベラ(貧しい芸術)」を代表する美術家ジュゼッペ・ペノーネさん(62)が、愛知県の豊田市美術館で12年ぶりとなる個展を開いている。展示室の壁に茶葉を積み上げたり、皮膚のしわ
を拡大して描いたり。ほぼ近作と新作だけの22点で構成する充実した内容だ。来日した作家に、自作について聞いた。
展示室の壁を、金網に入ったお茶の葉で覆い尽くした。高さ7.7メートル、壁の長さは3面で54メートルもある。この個展のために制作した「影を呼吸する――茶葉」だ。
海外では月桂樹(げっけいじゅ)を使っているが、今回は地元産の茶葉を使った。展示室をさわやかな香りで満たし、ありふれた葉の存在に目をむけさせる。
ペノーネさんは「お茶の葉は、日本の文化に深いかかわりがある。葉そのものを目で見ることで、日本人としての感覚を感じ取れるのではと考えた」と話す。
アルテ・ポーベラは、60年代後半からイタリアで始まった前衛的な美術運動。木や石など身の回りの素材を使って作品に仕立てた。その代表作のひとつともいえるペノーネさんの作品を、豊田市美術館は所蔵している
。樹木を特定の年輪にそって剥(む)くように削り、その年輪ができた年の木の姿をよみがえらせる「12メートルの木」(82年)だ。だが今回、あえて旧作は展示せず、小品の1点を除き、近作と新作のみで勝負している。
今回、多くの作品に共通するのは皮膚への関心だ。仮設展示にした「宝石箱」は、木の表面を獣の革でかたどった作品。人間の皮膚の有機的な模様を拡大して描くことで、巨大な絵画に仕立てた「黒鉛の皮膚」も5点あ
る。
なぜ皮膚か。「彫刻を作るには、素材の性格を知らなければならない。多くの情報を得るには手で触ることだ。皮膚は大切なセンサーなのです」とペノーネさん。 イタリアの片田舎で育った。初来日は70年。京都の西
芳寺(苔(こけ)寺)を訪れた時、苔に覆われた景観を「既に見たことがある」と感じたという。「西洋と東洋で、なぜまったく同じような感覚があるのかと驚いた」
自然にあるものを作品化する姿勢は、日本人の感性にも通ずる。美を見いだす鋭い眼力は、どうやって養ったのかと聞くと、「すでにあるものから形を見いだすのは、太古の昔から行われてきたこと。自然は美しさを内
包している。形を求めずに手を加えれば、素材の魅力はおのずと出てくるものです」と答えた。
◇9月23日まで、8月10日と9月21日を除く月曜休み。愛知県豊田市小坂本町8の5の1、0565・34・6610。(西田健作)
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