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ID 11156
登録日 2009年 4月 2日
タイトル
ブナ林 植樹で弱る
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/eco/ryokuka/ryokuka090402_01.htm?from=yoltop
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元urltop:
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写真:
  イラストが説明として掲載されていました
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 ブナやコナラといった広葉樹の植林活動ブームが続いている。ふるさとの山の再生や二酸化炭素の吸収源対策などにつながるからだが、現状のままだと、善意の行いが自然環境を汚す結果をもたらす恐 れがあることが、最近の研究でわかってきた。その実態と対策を、2回に分けてリポートする。
◇  「葉の開く時期がばらばら。植えてから10年近くたつのに、この程度しか育たないブナもあるなんて……」  東北大学の陶山佳久准教授は2006年、宮城県栗原市にあるブナの人工林を調査してあぜんとした。植林年などが書かれた森林簿で、259本すべてが1988年に植えられたことがわかっていた。それなのに、樹高も 幹の直径も、あまりにばらばらだったのだ。
 陶山さんは05年、遺伝子解析によって、宮城県内のブナの天然林が日本海側タイプと太平洋側タイプの2系統に大きく分けられることを突き止めていた。それをもとに、この人工林のブナを調べたところ、樹高は日本 海側タイプが平均4・49メートル、太平洋側タイプは同3・43メートル。地上30センチでの幹の直径もそれぞれ6・3センチ、4・5センチと、歴然とした差が生じていた。
 栗原市は内陸型気候。冬は深雪に覆われ、もともと生えていたブナは日本海側タイプだ。陶山さんは「積雪などの気象環境に対する適応度の違いが関係しているのではないか」と見る。
◇  長野県では、これとは違う異変が起きている。県中南部で植樹されたブナは、植えて5年ほどたつと、樹高が高くなるどころか低くなってしまう。この現象を見つけた県林業総合センターの小山泰弘研究員は、「冬芽は出 るが、春になると中身がなくなり、触るとぼろぼろになる」という。
 長野県の天然ブナを遺伝子解析すると、〈1〉日本海側タイプ(県北)〈2〉北関東タイプ(浅間山周辺)〈3〉富士山・伊豆タイプ(諏訪・松本)〈4〉愛知タイプ(木曽)――に大別できる。しかし、植えられる苗木の大半は日 本海側タイプ。小山さんは「雪が少なく気温が下がりやすい県中南部では、凍害に似た現象が起きている可能性がある」という。
 地域環境に適応した遺伝情報を持つ集団と、外部から持ち込まれた集団が交配すると、遺伝情報が混ざって環境適応能力が落ちる「外交弱勢」という現象が起きる。この問題についての環境省研究班で代表を務める 森林総合研究所の津村義彦・樹木遺伝研究室長は、「そういう樹木が枯れずに残って交配が繰り返された場合、周囲の樹木が成長を妨げられる恐れがある。樹木は寿命が長いため、影響に気づきにくい」と話す。
◇  岐阜県内のオオヤマザクラとエドヒガンの種子を調べ、双方にソメイヨシノの遺伝情報が混ざっていることを確認したのは岐阜大学の向井譲教授。エドヒガンの場合、その割合は解析した木の1割に及んだ。
 向井さんは「たとえばヤマザクラとソメイヨシノは別種だが、まれに遺伝子が混じる。サクラには自家不和合性があるが、ソメイヨシノの遺伝子が混じったヤマザクラは、ふつうのヤマザクラとの間で子孫を増やし、ソメイ ヨシノの遺伝情報をヤマザクラの中に広げていってしまう可能性がある」と指摘する。国をあげて進む広葉樹の緑化事業で、外交弱勢が起きている可能性があるのだ。
 針葉樹は林業種苗法によって、生産地から離れた場所で苗を植えないよう、スギは全国を7区域、ヒノキは3区域という具合に配布区域を設けている。だが、広葉樹の苗は法的制限がないため、韓国や中国なども含め 、国内どこからでも入手可能だ。津村さんは「交雑が進めば、回復するとしても数万年、数十万年もかかる」と警告する
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このページの公開日は1999年11月12日。最新更新日はです。

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