ID 10917
登録日 2009年 3月17日
タイトル
山本桂輔展/土屋仁応展 対照的な木彫表現
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/enta/art/news/20090317dde018040045000c.html
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元urltop:
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写真:
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山本桂輔(1979年生まれ)は、絵画と木彫に取り組んでいる作家。いずれも、人の顔に見える形や植物的なモチーフを交え、具象とも抽象ともつかぬ世界をつくってきた。新作個展は、そんな創作姿勢を、と
てつもないスケールで体感できる。
展示室の中央に鎮座するのは、高さ5メートルを超える彫刻。約30のパーツを組み合わせたクスノキに、アクリル、油絵の具で鮮やかな彩色を施した。第一印象は「ケバケバしい巨大キノコ」といったところか。
だが、見れば見るほど発見がある。木の幹のような中心部には、人物の顔が三つ彫り込まれ、天井へ伸びる棒状の物体の先にも顔がある。植物の種子のような形が随所にあり、増殖に増殖を重ねて新しい形をつくりだ
すかのようだ。絵画に視点を移すと、彫刻と同じモチーフを発見。力業だけで推し進めるのではなく、絵画と彫刻、部分と全体を巧みに絡ませた。
同じ木彫でも、土屋仁応(よしまさ)(77年生まれ)の作品は、じっと息を潜めていそうな、繊細さに満ちている。
クリーム色を基調にした彩色、穏やかな目をしたウサギやシカ、ハスの花。動物は像高71センチの「子山羊(やぎ)」を除き、20~30センチの小さなものばかり。「ライオンなどの王様的存在よりも、脇役のような動物
に関心がある」と話し、ハスは「花」、金魚は「魚」とシンプルな一般名詞の題名に置き換える。仏像と同じ玉眼の技法を使った目もいい。
興味深いのは、花と動物の作品をさりげなく呼応させた展示だ。繊細な彩色を加えて、花が魚、あるいは魚が花へと輪廻転生(りんねてんしょう)するさまを表現する。かわいいだけではない深みをたたえ、見る者の心
をとらえて離さない。
山本展は28日まで、東京・清澄の小山登美夫ギャラリー(電話03・3642・4090)。日、月曜休み。土屋展は23日まで、東京・日本橋高島屋美術画廊X(電話03・3211・4111)。
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