ID 10460
登録日 2009年 2月11日
タイトル
温暖化が原因で北へ移動する樹木
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新聞名
ナショナルジオグラフィック
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元URL.
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=25299927
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元urltop:
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写真:
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空想小説に登場する木の精でもなければ、樹木は移動したりはしない。そう思っている人はこのニュースに驚くかもしれない。なんと、一部の樹種は1世紀当たり100キロというペースで北へ移動していると
いうのである。
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例えばアメリカに分布しているキハダカンバという種のカバノキが同じペースで北へ移動すると、22世紀初頭には国境を越えて完全にカナダ側に入ってしまう可能性もある。
この発見は米国森林局の新しい研究によるもので、アメリカ東部に分布している数十種の樹木が予想以上に速いペースで移動していると結論づけられている。しかも原因は地球温暖化の可能性が高い。
発表された研究論文では、アメリカ東部30州の主要な40種の樹木について、その北方への移動が若木と成木の分布に基づいて立証されている。この論文は、今月発行の「Forest Ecology and
Management」誌に掲載されている。
テネシー州ノックスビルにある同局南部研究所の職員クリス・オスワルト氏によると、植物の移動に関するこれまでの研究はコンピューター・シミュレーションのみに頼って行われてきたという。研究の焦点も、どのよう
にして一部の樹種が丘や山を登っていくのかということに当てられていた。同氏は研究論文の執筆にも参加している。
しかし今回の研究では、緯度に基づいて樹木の移動が調査されている。しかも、同局が現地で収集した最新のデータが使用されているのだ。「この研究で地球温暖化と森林移動の関係が確認された。これは推測ではな
く事実である」と、ミネソタ州セントポールにある同局北部研究所の職員であり、研究を先導したクリス・ウッドオール氏は断言する。
ウッドオール氏の研究チームが調べたのは、北部の15種、南部の15種、そして両方に分布している10種の樹木から集めたデータだ。平均して樹齢20年未満の若木とそれ以上の成木について所在地の緯度が比較され
た。北部15種のうち11種は、本来の分布域から平均して20キロ以上北へ移動していると推測された。
北上が確認されたのは、例えばヒバ(ヒノキの一種)、アメリカシナノキ、サトウカエデ、ブラックアッシュ(トネリコの一種)、ビックトースアスペン(ポプラ類)、そしてキハダカンバだ。移動距離が一番大きいと思われるの
はアメリカシナノキとサトウカエデで、おそらく最大で50キロは移動しているようである。
カリフォルニア大学デービス校で植物保護を研究している生物学者マーク・シュワルツ氏は次のように評価する。「これは、広範囲に分布するさまざまな樹木を対象として森の移動を立証しようとした初めての本格的な
取り組みである。このデータから、気候変動の注目すべき証拠を見て取ることができる」。
北部の木は気温が高くなりすぎると育ちが悪いため、願わくは、樹木が移動するより速いペースで気候変動が進まないでもらいたい。とは言え、一部の樹木種の根付く場所や時期はその種子を運ぶ野生動物次第という
のが現状だ。
例えば松ぼっくりのようなヒバの種子は、アオカケス(スズメの仲間)が運んでいかない限り母木から遠いところに落ちたりはしない。他方で、コットンウッドやポプラ、アッシュまたはカエデの種子は、風に乗って数キロに
わたって分散するほど軽量である。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校の生態学者ダン・ボトキン氏によると、そのような移動性の高い種子を持つ樹種は森林局が算出したペースを超える速さで移動する可能性があるという。また、その結果として生
態系の破綻が危ぶまれるという。同氏は、「ペンシルバニア州北部とニューヨーク州南部が、野球のバットに使用される樹種アッシュの最適な発育環境である。この木が北へ移動して喜ぶ人は、これらの州にほとんどいな
いだろう」と話した。
アメリカ、ウェストバージニア州のモノンガヘラ国立森林公園で、サトウカエデの木々が霧に包まれている。2009年2月に発表された研究によると、おそらく地球温暖化が原因で、アメリカ東部30
州に分布する40種の主要な樹木が予想以上に速いペースで北へ移動しているという。このサトウカエデもそれらの中の1種だ。
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