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ID 9784
登録日 2008年 12月 9日
タイトル
タイトル
日朝とイチョウの木
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新聞名
新聞名 毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/kanagawa/news/20081208ddlk14070068000c.html
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元urltop:
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写真:
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横浜市の代表的な公園の一つ「根岸森林公園」(中区根岸台)では先週、イチョウの林が黄葉で黄金色に染まった。木漏れ日を浴びながら散策する人たちから感嘆の声が上がっていた。しかし、林の一角にあ る3本のイチョウの木が、日本と北朝鮮の「友好」のシンボルであることはあまり知られていない。
 イチョウの生みの親は横浜市旭区の主婦、加藤栄(えい)さん(83)。72年に社会党全国活動家婦人訪朝団の一員として平壌を訪問したとき、宿舎となった「モランボンの丘」の迎賓館の庭でギンナンを12、13粒拾っ て持ち帰ったのが始まりだ。夫の省吾さんがそのギンナンを鉢植えにして栽培したところ、発芽した。3年後、加藤さんは苗木5本を日朝友好の印として当時の飛鳥田一雄横浜市長に贈った。市は79年にそのうち3本を「 モランボンのイチョウの木」と名付けて根岸森林公園に植えた。
 83年のラングーン事件のとき、イチョウの1本がのこぎりで切られているのが見つかった。ナタで切りつけられたこともあった。いつしか「モランボンのイチョウの木」と書かれた白くいは抜かれ、由来を知る人は少な くなった。
 来年で植樹から30年。イチョウは約15メートルに育った。加藤さんら神奈川日朝婦人懇談会のメンバーは毎秋、イチョウの下に集い、肥料をまく。今年は11月9日、県内在住の日朝の女性約30人が集まった。そのと き、在日朝鮮人の参加者の1人が言った。「苦しいとき、悲しみに耐えられなくなったとき、このイチョウの下に来て、元気を養うの」  こんな経験を持つ加藤さんだが、「活動家」とはほど遠い、普通のおばあちゃんだ。和歌山県で生まれ育ち、専業主婦となり、終戦後、横浜にやって来た。当時の横浜は、市中心部が米軍に接収されていた影響で復興が 遅れ、「和歌山のへき地よりもひどい所で驚いた」という。「子どもたちの学校環境をよくしたい」と住民運動に取り組み、社会党とのかかわりができた。
 「拉致問題をどう思いますか」と尋ねると、「難しいことはわからない」とうつむいた。手には、日朝婦人交流の活動をまとめた冊子が握られていた。「この冊子も誰にでもお渡しするわけではないんです。相手によっては かえって反感を買ってしまうから」  拉致、核、ミサイルなど北朝鮮との間で解決を急ぐ政治課題は多い。同時に、草の根の日朝交流が政治的思惑で阻害されてはならないと思う。そして、いつかこの公園にイチョウの由来を示す白くいが復活し、皆がわ だかまりなく黄葉を愛(め)でる日が訪れるようにと願わずにいられない。
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