ID 9683
登録日 2008年 12月 3日
タイトル
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一刀彫、材料不足で イチイ入荷量、20年前の1割
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新聞名
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岐阜新聞
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http://www.gifu-np.co.jp/kikaku/focus/fo20081203.shtml
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イチイ入荷量、20年前の1割
コスト増大、弟子も取れず
飛騨の代表的な伝統工芸の一つ「一位一刀彫」。近年、材料として手に入るイチイの量が極端に減り、後継者不足などに加えて材料不足が、伝統継承の危機に拍車を掛けている。
一位一刀彫は、イチイで作られた作品に限り、国の伝統的工芸品に指定されている。しかし、天然林の減少や保護などで、材料に利用できるイチイは減り続けている。
飛騨地域の彫刻師41人でつくる飛騨一位一刀彫協同組合は、地元では必要分が確保できないため、1958(昭和33)年以降、北海道から仕入れ、その後、産地として頼ってきたが、昨年手に入ったのは約8・3立方メー
トルで、20年前の約10分の1。現地の市場での入荷量が少ないため、単価は2倍以上に跳ね上がり、組合の運営状況を圧迫している。
組合では、地元でイチイの植林もしているが、作品づくりに利用できるのは樹齢300年以上の大木。今、必要な材料の入手が困難を極めている。
代表理事の山本良吉さん(58)は「イチイで作るからこそ一位一刀彫として求められ、伝統を受け継いでこられたのに。お客さんの希望に合った作品ができなくなってきている」と、伝統工芸士としての技を思い通り発
揮できない事態に危機感を感じている。
材料は少なくなるばかりでなく、小ぶりなものが増えた。縁起物として大きなものが好まれる高砂も、10年前は高さ33センチの大作ができたが、現在手掛けるのは高さ20センチで精いっぱいという。
販売できる商品は減るのにコストは増大。不景気も重なって、採算が合わない―と、別の道を選ぶ仲間もいる中、材料が思うように手に入らないままでは弟子を取ることも困難。「彫刻師になるんだと言ってくれても、人
の将来を考えると、先行き不安な今の状況では勧められない」と、組合員が弟子入りを断ったケースも。材料不足は、後継者不足も加速させている。
今年、これまでに入手できた材料はわずか約2立方メートル。かつては彫刻師1人が1年間に使用していた量といい、組合の材料調達担当鎌倉成寛さん(52)は「このまま入ってこなければ、これだけを来年分として分
けるしかない。皆に申し訳ない」と頭を悩ます。
美しい木目を生かした工芸品に仕上げるため、ねじれていることなどが多い外国産は不向き。国内産でも、材料としての適正を目で見て確認しなければ購入できず、材料の調達状況の急速な改善は見込み難いという
。
組合に所属せず、独自のルートで材料を集めてきた小坂彫房=同市匠ケ丘町=の小坂礼之さん(39)も、材料の減少を危ぐしている。「イチイがなくなっても、一位一刀彫の高い技術だけは失うことはできない」と、材
料の約8割を他の種類の木で代用して対応している。
江戸時代から受け継がれてきた地域の伝統が、材料の不足で衰退していく事態は避けられないのか。誇りと使命感を持ち、木を愛してきた彫刻師らの苦悩は募るばかりだ。
【イチイ】 イチイ科イチイ属の常緑針葉樹。日本では北海道から九州にかけて山地に自生。約800年前、飛騨産のこの木で作ったしゃくを天皇に献上したところ、ほかより優れているとして位階の正一位にちなみ名
付けられたとされる。「岐阜県の木」「高山市の木」に指定。成長が遅いため年輪の幅は狭く美しい。飛騨地域では一位一刀彫のほか、宮笠などの材料としても重宝される。
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