ID 8666
登録日 2008年 8月26日
タイトル
仲間川(沖縄県・西表島)
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://kyushu.yomiuri.co.jp/magazine/keiku/0808/ke_808_080827.htm
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元urltop:
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写真:
写真が掲載されていました
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巨大な筆で、「風」という字が書かれようとしている、ようにも見えた。曲線はなんとも優美で、川面の青みがかった墨色は一面の緑に映えていた。
「毎日毎日、何度見ても、何年たっても飽きないんですよ」
藤崎雅夫さん(54)は目を輝かせ、西表島(沖縄県竹富町)の東部を流れる仲間川について話し始めた。
勤務先の東部交通は全長17・5キロのこの川で遊覧船を運航している。乗客のお目当ては流域に広がる日本最大のマングローブ林なのだという。
潮が満ちると、河口から10キロ辺りまで海水がさかのぼり、淡水と混じり合うが、マングローブの生息には最適な環境らしい。
間近に見たくて、パドルを手に、カヌーでこぎ出した。周りは木々がひしめき合い、密林という言い方がぴったり。時折干潟があるが、1円玉ほどのミナミコメツキガニが大群をなして行進しており、見上げると赤や白の翼
の野鳥が舞っていた。
この豊かな自然の危機がささやかれている。観光客が増加してきた20年ほど前から、倒木や枯れ木が目立ってきたそうだ。
近年大型台風に襲われることが多く、マングローブ林も痛手を受けた。行きかう遊覧船が起こす波が引く際に木々の根元の土砂を川に持ち去るのも一因と見られている。
「私たちにもできることがあるはず」。東部交通など観光に携わる5業者が「仲間川地区保全利用協定」を結び、独自のルールを作った。4年前のことだ。できるだけ波を抑えるように遊覧船を改良し、制限速度を設け
運航回数も減らすなど、努力を重ねている。
「キョロロロロー」
鳴き声が聞こえた方に目をやると、マングローブ林の間からリュウキュウアカショウビンがこちらを見ていた。この美しい夏の渡り鳥も秋には南へ去っていく。
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