ID 8339
登録日 2008年 7月22日
タイトル
鳥海山と人間(1) 共生示す奇形ブナ
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/news/20080722-OYT8T00838.htm
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元urltop:
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写真:
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鳥海山の標高約500メートル付近に広がるにかほ市の「中島台レクリエーションの森」には、不思議な形をした、ひときわ大きなブナの木が生えている。高さは約25メートル、幹の周りは7メートル62。5人で
両手をつないでようやく囲めるぐらい太い。木の年齢である樹齢(じゅれい)は300年を超える。林野庁の「森の巨木百選」にも選ばれている奇形のブナ「あがりこ大王」だ。
太い幹の低いところから、大きな5本の枝が生え、王様の冠のような形に見える。それぞれの枝から、さらに細かく枝分かれしている。幹を「親」、枝を「子」とすると、上に子がいるため、「上(あ)がり子」と呼ばれるように
なったという。「お化(ば)けブナ」「妖怪(ようかい)ブナ」という名前でも親しまれている。
あがりこ大王が奇形になった理由は、山が噴火した時に被害を受けたとか、病気にかかったためだろうと思われていた。
だが、現在では、かつて農家が「炭焼き」をするのに、炭にする木を取るため、仕事のない冬の間に木を切ったからだと考えられるようになった。
東京農工大大学院の福嶋司教授(植生管理学)によると、ブナは根もとから切り倒すとほとんどが枯れてしまうが、2メートルほど残っていれば育つ。農家の人たちは冬に、2メートルほどに積もった雪の上に突き出てい
るブナを切った。春になると、雪に埋もれていた幹の下の部分が姿を現し、残った幹から新しい芽が出る。それが育つと切られ、また別の芽が出て育つと切られる。これが繰り返されるうちに、長い時間をかけて、複雑な
形に枝分かれした大きな木に育ったというのだ。
森の中には、あがりこ大王のような不思議な形のブナが何本もあり、この付近で炭焼きがさかんに行われていたことを物語っている。
福嶋教授は、「昔の人は幹を根元からは切らなかった。木がまた芽を出し育っていくための工夫です。あがりこ大王は、自然の恵みを受ける人間がその自然をいたわれば、一緒に暮らしていけることを示す生き証人な
のです」と話す。
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