ID 726
登録日 2006年 4月 7日
タイトル
アマゾン探検記――一体験――雨に勝てず帰路につく=木の枝も降るジャングル
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新聞名
ニッケイ新聞
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元URL.
http://www.nikkeyshimbun.com.br/060406-62colonia.html
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元urltop:
-リンク切れ-
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写真:
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この当分止みそうもない空模様については、私も同感である。その上、この調子で降られては、調査もヘチマもないので、これは、またの機会に譲るとして、出直すのが得策かも、と皆と計る。皆も同感で、帰
ることに一致する。
さっそく埋めてあった食糧を掘り出し、十分に包装して、ほかの荷物とまとめて背負い、雨の中を帰路につく。
今まで想像はしていたが、実際に暴風雨の中のジャングルを歩くのはたいへん危険である。立ち枯れた大木の枝がバリバリ、ズシーンと落ちてくる。細い木の枝や腕くらいの太さの枝はしょっちゅうバラバラと降ってくる
。その合間に巨木がブッ倒れる。
日光が強くて水分が多いので、植物の生長は早い。木はどんどん成長する。その割りに根が張らないので、強い風が吹くとすぐ倒れる。どこかでホヤホヤ育てられた坊ちゃんみたいなものだ。
ひと抱えもあるような木が落ちてくる。密林のなかはごうごうと唸りをあげて、荒れ狂っている。その中を体を丸めて、ドブ鼠のように一点から次の点へと突っ走る。ちょっと上がって行方を見定めて、また走る。約一時
間走ったり止まったりしながら、危険地帯を通り過ぎる。
雨も小降りになり、風もおさまったので、歩き始める。頭のてっぺんから褌(ふんどし)まで、ずぶ濡れである。水しぶきをあげながら歩いて、家の近くまでたどり着く。家の近くの小川はほとんど水がなく、渡ってきたカス
タニャの倒木は、水の下になってしまって、その上を水が凄い勢いで走っている。
そこで、荷物を頭に乗せて水の中を歩く。出てくるときは、臑(すね)の半分くらいまでしかなかった水が、胸を越して首まで来るところがある。水の流れに乗って、半分つま先で水底を蹴るようにしながら歩いて対岸に着
く。あとは、家まで一気に。
家ではまだ帰って来ないだろうと思っていたらしく、驚きと喜びも一入。
持ってきた塩蔵肉を四人で等分に分けて、フィルモとシッコに日当を渡し、労をねぎらって帰す。
▽ ▽
中途半端になってしまいましたが、私のアマゾン探検記のお粗末です。
オンサ棲む川辺に結ぶ夢 なれば
銃を抱えてしばしまどろ む
何か北支戦線あたりの兵 隊さんみたいな感じ
風立ちて雨来るらし グァリーバの声沸き起こ る 森のをちこち
グァリーバは吠猿 中型 の猿で雨の前 朝と夕方 時計を持っているかと 思うほど正確な時に泣き ます
木に逃げしコアチー撃て ば 忽ちに一家眷属雨と 降り来る
コアチーは、長鼻浣熊。群棲しています。木に逃げ上がった一匹にズドンと一発やれば、途端にドスドスバタバタと一遍に三十匹近くが落ちて来ます。あっと驚いてどれを撃ったろうかとうろうろしている間に、てんでの方
向にするすると消えてしまって、ふっと気がついた時には一匹も残っていません。実にみごとな韜悔作戦。野獣ながら天晴(あっぱれ)というほかありません。おわり (坂口成夫さん記)
■アマゾン探検記――一戦後移民の体験――連載(1)=旺盛な開拓者精神の発露=猟師とともに重武装
■アマゾン探検記――一戦後移民の体験――連載(2)=長径25センチの亀、〃裏表〃焼く=野蛮に昼食、指脂だらけ
■アマゾン探検記――一戦後移民の体験――連載(3)=食料調達、山七面鳥仕留める=椰子の葉ふき仮小屋建設
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■アマゾン探検記――一戦後移民の体験――連載(5)=水筒の水のみ干して後=渋みある「水の蔓」に頼る
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■アマゾン探検記――一戦後移民の体験――連載(7)=川水のカルシウムの有無=下流で牛の成長に影響
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■アマゾン探検記――一戦後移民の体験――連載(9)=毒の中喬木、水に漬かる=残らず死んだ周りの魚
■アマゾン探検記――一戦後移民の体験――連載(10)=闇の中、光る目、鰐を撃つ=1時間後、逃走計り絶命
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