ID 712
登録日 2006年 4月 6日
タイトル
チェーンソーは庭のキレ者
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://www.asahi.com/housing/world/TKY200604050115.html
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元urltop:
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写真:
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オーストラリア・柳沢有紀夫 ガーデンだって家の一部だ
わが家の物置にはチェーンソーが入っている。……と書くと、映画『13日の金曜日』の殺人鬼ジェイソンのような人物だと思われそうだが、じつはこれ、ブリスベンではさほど珍しいことではない(と言っても、もちろん
殺人鬼が珍しくないわけではない)。
オーストラリアは広大な国土を持つ。ブリスベンでは一戸建ての家の場合、敷地面積は最低でも400平方メートル以上。ちょっと郊外に行くと「エーカレッジ」と呼ばれる広さ数エーカー(1エーカー=約4046.8平方メ
ートル)にも及ぶ敷地を持つ家が、ゴロゴロしている。
しかもブリスベンは亜熱帯に位置する。「ヒートアイランド現象」などという言葉ができるずっと前から、人々は生活の知恵として、庭に木々を植え、暑さと湿気をしのいできた。
木々は亜熱帯の暑さと湿気を和らげるのに役立つ。だが逆に亜熱帯だから、雨と日差しをたっぷり受けて木々はスクスクと育ってしまう。
広大な土地に数多くの木々が植えられ、しかも素早く成長する。しかし、育ちすぎると日陰になって洗濯物の乾きが悪くなったり、嵐のときに家がつぶされたりする原因にもなる。そこでどうしても、枝の剪定(せんてい)
をしたり、場合によっては幹の高さ2メートルくらいのところでバッサリ切ったりするという作業が必要になるのだ。
もちろん、木々を切る業者(いわゆる「庭師」とは別に専門の人たちがいる)を呼んでもいい。病気になった巨木を根元から切るといった大きな作業の場合はやはり専門家に任せるのが安心だろう。しかし、毎年冬に行う
ような、せいぜい幹の太さが15センチくらの木々の処理くらいは自分で行うのが、ろくに道具もない開拓時代に土地を一から切り開いてきた男たちを祖先に持つ誇り高きオーストラリアの男たちなのである。
開拓者たちの魂は持ち合わせていないが、サイフの中身のほうは開拓者並みにしか持ち合わせていない私も、やはり普段は自分でチェーンソーを用いてカットすることにしている。木々を切る業者に来てもらうと数万
円かかるが、チェーンソーの値段は約1万円。出費も大幅にカットできるからである。さらにはチェーンソーで枝をバッサバッサと切り落とせばストレス解消にもなるはず! ……しかし実際にやってみると、スパッと切れ
るものではなく、刃をじっと枝に当て続けるという意外と地味な作業で、ストレスもたまる。
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