ID 7104
登録日 2008年 4月 9日
タイトル
「桜の老木に寄せて」
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新聞名
紀伊民報
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元URL.
http://www.agara.co.jp/modules/colum/article.php?storyid=143793
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元urltop:
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写真:
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ことしの桜は近年になく見事だった。川の土手に並ぶ若いソメイヨシノや山の斜面に見えるシダレザクラなど、名もない木の一枝一枝が輝いて見えた。
▽花曇りの日曜日、田辺市中辺路町近露の野長瀬智子さん(84)方を訪ねた。石垣には「気軽にお入りください」と、邸内に招く案内板が掲げられている。ご好意に甘えて、庭に入らせていただいた。
▽樹齢260年を超えるシダレザクラは、一段と見栄えがする。一時元気がなくなり、3年前に樹木医の治療を受けた。その後の回復ぶりは目を見張るばかりだ。ピンクの花が印象に残っていたが、ことしの花は真っ白だ
った。「つぼみのころは濃いピンクで、盛りになるにつれて白くなります」と野長瀬さん。
▽花見を終えて帰宅したら、裏庭の石垣の間からキイジョウロウホトトギスが黄緑色の新芽を出していた。桜の季節だというのに、もう秋の準備が始まっている。10月になれば、釣り鐘の形をした黄色い花を咲かせる。
▽季節の目覚まし時計は正確に動いているように見えるが、天候の方はどうも変だ。つい先日も、季節はずれの暴風が全国的に吹き荒れた。時計の針がいずれは狂うのだろうと不安が募る。
▽江戸時代からこの地に根を下ろしている桜は、環境の変化に鈍感なわたしたちの行いをどのように見ているのだろうか。華やかに咲く花に、後の世代の人たちも出合えるよう、環境保全に気を配りたい。(
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